女嫌いの殿下から、身代わり婚約者の没落令嬢なのに
ナゼかとろ甘に愛されています♥
【本体1200円+税】

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●著:すずね凜
●イラスト:ことね壱花
●発売元:三交社
●発行元:メディアソフト
●ISBN:978-4-8155-4053-1
●発売日:2021/6/30

お前の涙を味わえるのも私だけの特権だ

継母達に屋敷を追い出され、王城のお掃除係を務める伯爵令嬢カロリーヌは、王太子フランソワの婚約者になってほしいと頼まれる。「柔らかいなお前は。女の子というのはなんて抱き心地がいいのだろう」彼は女性アレルギーだがカロリーヌだけには触れられるというのだ。彼の病が治るまでだと思い引き受けたカロリーヌだが、フランソワは本物の婚約者のように彼女に甘く触れ、誘惑してきて――!?




「ん、ふ……」
 柔らかな唇の感触の心地よさに、カロリーナはうっとりと目を閉じる。
 と、フランソワの濡れた舌先がカロリーヌの唇を割るようにぬるっと這い回った。
「あ……?」
 他人の舌の感触など生まれて初めてで、驚いて声を上げると、開いた口唇からするりとフランソワの舌が忍び込んできた。
「んっ、んんぅ?」
 驚いて身を引こうとして、二、三歩後ずさりしたが、壁際に追い詰められてしまう。
 フランソワの身体と壁に挟まれて身動きできないでいると、大きな両手ががっちりと背中に回って、きつく抱きしめてしまう。
 フランソワの熱い舌先が、そろそろとカロリーヌの歯列を辿り、ゆっくりと口蓋を舐め回した。
「んんぅ、ふ、ふぁ……っ」
 フランソワの舌は確かめるみたいに丹念に、カロリーヌの口腔を舐めていく。
 最後に、怯えて奥に縮こまっていたカロリーヌの舌を探り当て、ぬるぬると舌を擦り合わせてくる。驚きと恥ずかしさで、目を強く瞑ってしまう。どうしていいかわらかないので、舌先でそっと相手の舌を押し返そうとしたら、ちゅうっと音を立てて強く吸い上げられた。 
「ぁぅ、ふぁ、ん、んぁ」
 一瞬、ぞくりと背中に悪寒のような震えが走った。
 フランソワは舌を絡め、何度も舌を吸い上げてくる。
「ふぁ、く、ふぁ、んんんぅ」
 心臓がばくばくし、頭がクラクラする。
 吸い上げられるたび、身体の力が抜けて、急に体温が上がってくる気がした。
 痛みが走るほど舌を吸われるたび、ぞくぞくとうなじから背中にかけて震えが走るが、不快なものではなく、不可思議な甘い痺れが混じっている。
「や……く、ん……んんぅ、っ……」
 舌の付け根まで強く吸われ、息が詰まり嚥下できない唾液が溢れてくる。すると、フランソワの舌がくちゅくちゅと唾液を捏ね合わせるように口腔を掻き回し、音を立ててそれを啜り上げた。あまりに卑猥な音と行為に、気が遠くなる。
 力の抜けた身体を支えるように、フランソワがしっかりと抱きすくめ、わずかに唇を離し、はあっと満足そうにため息をついた。
「ああ甘いな――お前の口の中、舌、なんて甘くて美味なんだ。もっと味わわせてくれ――」
 拒む間も無く、再びフランソワの舌が口腔に挿入される。
「ふ、ん、ふぁ、ん、は……ぁ、ん……」
 口いっぱいにフランソワの舌で満たされ、余すところなく蹂躙されているうちに、未知な心地よさが迫り上がってきて、拒むことができなくなる。
 こんな淫らで深い口づけがあったなんて。
 しかも、酩酊しそうなほど気持ちよくなってしまう。
 ひどく身体が昂り、下肢の奥の方のどこかが妖しくざわめいた。
 四肢に力が入らず、頭の芯がぼうっとしてきて、フランソワのなすがままに口腔を貪られてしまう。
「はぁっ――堪らない、お前の舌、口づけが悦すぎて、止まらぬ――」
 息継ぎでわずかに唇を離したフランソワは、熱のこもった青い瞳で見つめ、色っぽい声でささやく。その声色にすら、ぞくぞく背中が甘く慄く。彼の美麗な顔に浮かぶ野性味を帯びた欲望の色に、壊れそうなほど胸が高鳴り、
「あ、ぁあ、殿下……お願いです……もう……私、気が遠くなりそう……」
 フランソワの腕にもたれ、息も絶え絶えで訴えた。
「カロリーヌ、カロリーヌ――その顔、可愛いぞ。お前のなにもかもが、可愛い。食べてしまいたいくらい、可愛い」
 感極まったように、フランソワはカロリーヌの火照った頬や額、涙の浮いた目尻にも口づけの雨を降らせた。
「ん……ふ、ぁ……」
 初めての深い口づけの余韻に、カロリーヌの頭の中はまだ霞がかかっている。
「そうだ――婚約の証にこれをお前にやろう」
 ゆっくり顔を離したフランソワは、壁にカロリーヌを押し付けて、自分の首から下がっている細い金鎖を外した。そこには小さな指輪がネックレスのようにぶら下がっていた。
 フランソワはその指輪を外し、カロリーヌの左手を取ると、薬指にそれを嵌めた。
 シンプルな金の指輪だが、形の揃った小さなダイヤモンドが散りばめてあり、見るからに高価そうだ。
「これは……?」
「亡き母の形見の指輪だ。父上は、ローザ王妃に懇願され、私の母の遺した物をことごとく処分してしまった。唯一、これだけは子どもの時の私のおもちゃ箱の隅にまぎれていたのだ。ああ――お前の指にぴったりだな」
「そんな――たいせつな形見を、いただけません」
 カロリーヌが慌てて指輪を外そうとすると、フランソワの手が優しくそれを押しとどめる。
「もう私には、お前以上にたいせつなものはない。私が触れられる唯一無二の乙女がお前だ。受け取ってほしい」
「はい……」
 たとえ繋ぎの婚約者だとしても、こんなにも丁重に扱われて、カロリーヌは胸がじんと熱くなる。
 カロリーヌは真摯な眼差しでフランソワを見つめた。
「殿下、私は誠心誠意、心を込めて、殿下の婚約者としての役目を勤め上げます。あの――男性と接するのは初めてなので、不馴れなことは寛大にみてください」
 フランソワが苦笑した。
「ふ、それは私も同じだ。女性と接するのは初めてなので、お前の扱いに慣れぬことをするのは、大目にみてくれ」
 白い歯を見せたフランソワの表情があまりに素敵で、カロリーヌはドキドキしすぎてもう声も出なかった。

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