猫かぶり侯爵様の溺愛研究
淫らに零れる乙女の蜜薬
【本体639円+税】

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●著:熊野まゆ
●イラスト:旭炬
●発売元:三交社
●発行元:メディアソフト
●ISBN:978-4-87919-385-8
●発売日:2018/1/25

だめ?
だが気持ちいいだろう?


製薬研究所の研究員に採用されたオリーヴは、勤務初日に研究所の中で、品行方正で知られた研究所の所長、リーンクロス侯爵ファビウスが、だらけている姿を偶然目撃してしまう。豹変した彼に開発中の媚薬の実験台にされるオリーヴ。「いやらしいことをしたくなってきたんだな? では成功だ」裸にされ触れられ、初めて知る悦楽。忘れたいと思うもファビウスは、その後も彼女をデートに誘ったり、意味ありげに触れてきたりして!?




「おい、待て!」
逃げ行くオリーヴの手首を男がつかんで引き止める。
「ふぎゃっ!」
オリーヴの頓狂な声とともに、ふたりはもつれあってくさむらの上に倒れ込んだ。
「いたた……」
「勤勉でおとなしいかと思えば……まったく。とんだおてんばだ」
ドサリと大きな音を立てて地面に仰向けになったわけだが、痛くはなかった。それは、彼に頭と腰もとを支えられているからだ。男はオリーヴに覆いかぶさるようにして彼女の顔を眺める。
「あ、あの……っ!」
唇が触れてしまいそうな位置に彼の顔がある。少しでも動けば鼻がぶつかってしまう。
(長いまつ毛……)
薄茶色のまつ毛は彼がまばたきをするとよけいにその長さが強調される。透明感のある碧い瞳は先ほど見た澄んだ池の水底を思わせた。
目と眉、それから鼻と唇――それぞれが美しく整っていて、絶妙なバランスで配置されている。まさに絵に描いたような美貌である。
男もまたオリーヴの顔や体をじろじろと見まわしていた。
「――新薬のモルモットが欲しいと思っていたところなんだ。ちょうどいい」
素の姿を知られてしまったからには取り繕っても仕方がない、と付け加えて男はオリーヴの頬と唇を人差し指で撫でた。悪役のような鋭い笑みをたたえている。いつかの彼が浮かべていた張り付けたような笑顔とは程遠く、いまのほうが自然な表情のように思えた。
その笑顔に、胸がドクンと高鳴ってしまった理由はあとから考えてもわからなかった。
なにか言ったらどうなんだ、とせっつかれたオリーヴは口をパクパクと動かしたあとで何とか言葉をつむぐ。
「あ、あなたは……リーンクロス侯爵さまですか?」
尋ねると、彼はますますけげんな顔になった。
「そうだが。なにか文句でも?」
「あ、いえ……そうですね。先日お会いしたあなたは何だかうさんくさいなと思っていましたから、いまのほうがしっくりきます」
そう正直に言ってしまったあとで、「しまった」と自身の失言を後悔する。
「――ほう?」
リーンクロス侯爵――ファビウス・バグウェルは口の片端を引きつらせて嗤った。
「面白いことを言う。本格的に実験をする前に下調べをするとしよう」
「……っ!」
白衣の胸もとに手を当てられ、どうしてこんなことになったのかわからずオリーヴはひたすらにうろたえる。なにか抗議しようと口を開くものの、彼の顔を見ればその美しさに魅入ってしまい言葉が出てこない。そうしているあいだに、白衣の下に着ていた茶色いブラウスのボタンを外されてしまう。
「なっ、なにをなさるんですか!」
いよいよ危機感を覚えてそう叫んでみたものの、ファビウスの手は止まらなかった。オリーヴの反応を面白がるように口の端を上げるばかりで、いっこうにやめようとしない。
「あ……っ」
あれよあれよという間に中のシュミーズも開かれて、乳房がさらけ出されてしまう。明るみに出たオリーヴの乳房をファビウスはしげしげと見つめた。
とっさにそこを腕で隠そうとした。しかしあっさりと彼に阻まれる。ふくらみのいただきにファビウスの指先が這い、妙な声が出てしまって口を押さえていると、ファビウスはいっそう愉しそうに笑みを深めた。
「――ちょっ、あのっ!」
ファビウスはオリーヴの体を軽々と抱え上げてすたすたと歩く。
(どこへ行くんだろう?)
研究所の間取りはまったくわからない。建物の外ですら迷ってしまったくらいだ。この広大な研究所の間取りを覚えるまでにはかなりの時間がかかりそうだとオリーヴは思った。
(実験――って言っていたわよね)
オリーヴが考える『実験室』は無味乾燥としたものだった。だからその部屋に入った瞬間、あまりにも洗練された空間を目の当たりにし、状況も忘れて思わず声を上げて驚嘆してしまった。
天井まで届きそうなほどの大きな絵画に描かれているのは緑豊かな大自然。それがどこを描いたものなのか、オリーヴにはわからない。
天井から吊り下がるクリスタルのシャンデリアは明かりが灯ればさぞ美しく室内を照らすのだろう。
蔓薔薇模様が配された白いカウチを通り過ぎ、ファビウスは一直線にベッドへ向かう。四隅に腰くらいまでの支柱がつき、枕もとにカーテンがついたベッドは高さがあり、見るからにふかふかである。
壁面に造りつけられた大きな鏡を横目で見ながらベッドへ下ろされると、案の定とてつもない弾力だった。ベッドに寝かされたオリーヴの体が数回、小刻みに跳ねる。
「さて……どんなふうにいじめようか」
ファビウスの白いドレスシャツの襟もとは初めからゆるんでいた。それをいっそうくつろげるものだから、胸板が垣間見えるほど前がはだけた。思いのほか厚みのある胸板を前に、しばし目が離せなくなったオリーヴだが、ファビウスが物騒な発言をしたことにはたと気づく。
「いっ、いじめる!? あのっ、新しい薬の実験をなさるんじゃ……」
「まあ、言葉のあやだ。細かいことは気にするな」
ファビウスはベッド脇に置いてある棚の引き出しをゴソゴソと漁っている。それから取り出したのは、丸く平べったいケースだ。塗り薬が入っているものと思われる。真っ白なパッケージにはなにも書かれておらず、いかにも実験薬といった雰囲気を漂わせている。
オリーヴはファビウスがケースの蓋をまわすのを黙って見つめていた。
「……実験には同意、というわけだな?」
ファビウスはケースの蓋を開けて棚の上に置く。いまだにはだけたままの自分の胸もとを押さえてオリーヴは彼の手もとを見やる。
「それは……だって、これってお仕事なんですよね?」
モルモットにされてしまうのは癪だが、彼は上司だ。しかも勤務初日に庭で迷ってしまったという失態もある。へたに逆らえない。せっかく高給の研究職員に採用されたというのに、勤務が始まってもいない段階でクビになるのだけはごめんこうむりたい。
ファビウスはオリーヴの質問には答えず「ふっ」と鼻で笑った。
「なあ、この服は自分で選んで着ているのか?」
「そうです、けど……。あのっ!」
「なんだ?」
実験薬のケースをオリーヴのかたわらに置いて、ファビウスは彼女のブラウスのボタンを下まですべて外してしまう。
「どっ、どうして服を脱がなくちゃいけないんですか!?」
「裸のほうが実験しやすいからだ。それに、この茶色いブラウスはまったくもって白衣にそぐわない。いっそ中にはなにも着ていないほうがいい」
白衣、ブラウス、そしてシュミーズと、順序よく肩から抜けていく。
「ほら、全部脱ぐんだ。スカートも」
「あのっ! ちょっと待ってください」



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