一途な副社長は
偽りのフィアンセに
キスをする
【本体639円+税】

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●著:玉紀 直
●イラスト:天路ゆうつづ
●発売元:三交社
●発行元:メディアソフト
●ISBN:978-4-8155-2004-5
●発売日:2018/06/25

もっともっと幸せにする。この薬指に、誓うから


OLの市橋真衣はリゾート地のホテルで神楽智章と知り合い、一夜を共にする。住む世界が違う人だと連絡先も教えずに帰宅したが、智章は取引先の会社の副社長だった。真衣を捜しだし、祖父のために婚約者のふりをしてくれと頼んでくる智章。彼の真摯な態度に思わず引き受けた真衣に、智章は当然のように彼女との同棲を決め、甘く誘惑をする。「あの夜から君が忘れられなかった」元から彼に惹かれていた真衣は、嬉しくも心乱れて!?





「ワンピースに、しみてしまったかな」
液体がしみただろう部分の布を咥え、無造作に引っ張る。柔らかい生地がはだけて上胸のふくらみがチラリと見えた。
焦ってはだけた部分を片手で押さえようとした真衣だったが、そのとき智章は、すでに服ではなく彼女の首筋に吸いついていた。
液体が垂れた跡を逆になぞり、鎖骨から首筋を上へ向かって唇が這っていく。ときおり感じる熱い感触は舌だろうか。
室内は心地よいほどの適温なのに、この感触のせいで甘い震えが止まらない。
「そんなに震えなくていい」
クスリと笑われ、カアッと頬の熱が上がる。智章は首筋を丹念になぞると、耳元に吐息を広げながら、くすぐったくなるくらいの歯痒さで耳朶を噛んだ。
「あっ……ふぅ……」
震えなくていいと言われても無理だ。なにかされるたびに身体が反応する。
「見たまま、初心なんだな」
「かっ、神楽さん……」
からかわれたような気がして、反抗をするように声をあげる。しかし智章は笑いながら手に持ったままのグラスをカラにし、唇を重ねてきた。
グラスを絨毯に転がしたかと思うと、すぐに両腕で抱きすくめられる。エレベーターでされた、ただ触れるだけのキスではなかった。
深く咥えこまれ、望むと望まざるとにかかわらず、口腔内にねじりこまれた舌がいやらしく真衣の舌をさらっていく。
「んっ……ぅうンッ」
喉で呻く声に予想外の艶が含まれていたような気がして、真衣はにわかに焦る。が、どうしたらいいのかわからない。
舌を搦められてもされるがままだし、両手も行き場を迷いさまようばかりだ。
智章の舌は真衣の舌を回すように舐め、自分の口腔内に引きこんではキュッと甘噛みをする。そうされるたび脳髄まで痺れるような気がした。
深い所で息をひそめている官能が、彼に煽られて徐々に顔を出し始める。自分でそれに気づいても、真衣には抗うすべがない。
「……んぅっ……ンン……」
強く唇を押しつけられているせいで背中が窓ガラスを強く押し、割れてしまったらどうしようとありえない心配が生まれる。行き場のない両手を窓につけ背中を離そうとしたが、その手は目的を執行する前に離れてしまった。
真衣の身体から腕を解いた智章が、ワンピースのストラップを両肩からするりと下げたのだ。
「ンッ……!」
驚いた拍子に窓を離れた両手から、ストラップが抜け落ちる。Aラインのワンピースはそのまま足元へ落ちてしまった。
あっという間に下着姿になった自分を感じて、真衣は咄嗟に両腕を胸で交差させ自分の肩を抱く。
そこまで大きな反応をされると思っていなかったのか、智章は唇を離し、真衣を見つめた。
「真衣さん?」
「あ……、ご、ごめんなさい……。ここまでついて来て、往生際が悪いんですけど……つい……」
子どもっぽい反応をしたかと思う。しかし真衣にしてみればしようがないのだ。
身体を隠す彼女の両手を掴むと、智章は腕を開かせそのまま窓に押しつけた。
「俺に抱かれるのは、いや?」
「そういうことじゃなくて……、びっくりしちゃって……。慣れていないから……」
真衣は智章から視線をそらし、下を向いてしまった。身体を隠したことを彼が怒っているわけじゃないことはわかるのだが、気まずかったのだ。
「真衣さん……、ハジメテ?」
その言葉を聞いただけでビクッと大きく身体が震えた。返事はできなかったが答えたようなものだ。
彼女の反応で智章も察したのだろう、「そうか」と小さく呟いて真衣から手を離したのである。
真衣は顔が上げられない。謝ったほうがいいだろうか。せっかくいいムードだったのに、台無しにしてしまった。
旅先で意気投合した相手がなにも知らない女だったというのは、大人の男性にとっては気分のいいものではないのかもしれない。
「あの……」
そろりと顔を上げて口を開きかける。その瞬間、真衣の身体がふわっと浮いた。
「きゃっ!?」
なにかと思えば智章に抱きかかえられている。それもお姫様抱っこで。
「か……神楽さ……」
謝ったらいいのか、重いから下ろしてくださいと言うのがいいのか、頭が混乱する。そんな彼女を意に介さず、智章はスタスタと寝室へ向かい無言のまま真衣をベッドに横たわらせた。
「……神楽、さん……?」
真衣は泣きそうだ。彼は怒っているのだろうか、早く謝らなくては。――けれど……
智章は横たわる真衣を四つん這いで上から見下ろし、優しく微笑んでいる。
「ハジメテなら早く言ってくれ。なんとなく、そんな雰囲気ではあったけれど」
「す……すみませ……」
「危なかった。気がつかなかったら、勢いにのせてあの場で挿れてしまうところだった」
「えっ……!」
カアッと顔が熱くなる。処女喪失が窓辺で立ったまま、というのはハードルが高すぎて、想像しようとしただけで焦りが湧き上がってくる。
戸惑いに震える唇をふさぐように、智章が軽く自分のそれを重ねてきた。
「ハジメテなら、大切に抱かせてもらわないとならないな」
先程のような激しく咥えこむキスではなく、チュッチュッとかわいい音をさせ、触れては離れ離れては触れる、鳥のようなキスだ。
そうしながら彼は自分の上着を脱ぎ捨て、ネクタイを外す。シャツのボタンを途中まで外したが、その手を止めて苦笑いで唇を離した。
「我慢の限界……。さわっていい?」

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