花嫁契約は終わったはずですが!?
別れた冷徹社長の執愛プロポーズ
【本体1200円+税】

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●著:あさぎ千夜春
●イラスト:天路ゆうつづ
●発売元:三交社
●発行元:メディアソフト
●ISBN:978-4-8155-4016‐6
●発売日:2019/5/30(※絶版・電子版配信終了)

「俺と君とで、恋愛のやりなおしを要求する!」
元・契約夫からまさかの再婚要請!?

大手デベロッパー社長の和臣と愛のない契約婚をした奏は、契約は果たしたとして一年後に離婚届を提出した。しかしその翌日、奏の前に和臣が現れる。動揺して揉みあった際、和臣に怪我をさせてしまった奏は「怪我が治るまで公私ともに支えろ」と要求され、住み込みの秘書をする羽目に。しかも和臣は「もう我慢しない」と奏を溺愛し始め!?
書下ろし、離婚から始まるリベンジ系ラブストーリー!




「ああ……それは……その──愛らしいなと、思っていたんだ」
「……え?」
 今彼はなんと言った?
 奏がポカンとしていると、和臣はどこか自嘲するようにかすかに笑う。
「そうだな……信じられないだろう。俺はこういう男だ。もう隠すのはよそう。君が俺のそばにいるときはいつも……その顔をずっと、永遠に、誰にも邪魔されず眺めていたいと思っていた」
 和臣が、苦々しい顔で甘いセリフを吐いている。
 目と耳に、いっぺんに新規の情報が押し寄せてきて、奏の頭では処理が追いつかない。黙り込んでいる奏に、和臣はどこか苦しそうな笑みをひっこめ、冷えた視線を向けた。
「君の言いたいことはわかる。気持ち悪いと、思っているんだろう」
「……?」
 奏は無言で頭をかしげた。もうそうすることしかできなかったのだ。
 だが和臣はそんな奏の反応を、悪く取ったらしい。
「いいんだ。俺も自分で自分が気持ち悪いと思っているからな」
 和臣は椅子に背を預け、軽く肩を竦める。
「金で君を強引に妻にしたうえに、なにもさせず、外出した先のパーティーで、君が男たちに注目されるのも嫌になって屋敷に押し込めた。その一方で、君が俺のことを嫌いでも、子供でもできれば、そのうち諦めるだろうと思っていた。だがこの一年で子供は授からず、どうしたものかと悩んでいるうちに、気が付けば君はさっさと家を出て行き離婚届を提出している……本当に最悪だ」
 和臣の言葉は、なにからなにまで、奏の予想とは違っていた。
 けれどただひとつ、彼が話した内容で、奏にも推測できることがあった。
「えっと……もしかして和臣さん……」
 奏はおそるおそる口を開く。
 我ながら図々しいし、身の程知らずだし、自意識過剰な気がしたが、言わずにはいられなかった。
「私のこと、もしかして、好きだったんですか……? なーんて、ね……」
 わざと少しおどけてみせたのは、自分でも信じられなかったからだ。だが和臣はグッと言葉を詰まらせ、片手で顔を覆い、下を向いてしまった。
「か、和臣さん……?」
 一瞬怒らせたのかと思った。だが顔を見ると、それは違うとわかった。彼は照れているのだ。
 いや、正直に言えばうつむいたままなので表情はよくわからないが、顔を隠している手や、美しい黒髪の下から覗く耳や首筋が真っ赤に染まっている。氷の男が赤面しているではないか。
(えっ、ほんとに!? 本当に、私のことが好きなの!?)
 呆然とする奏を前にして、和臣はしばらく沈黙を守っていたが、いつまでも黙っていてはいけないと思ったのだろう。死にそうな声でささやいた。
「……初めて会ったときから……ずっと、好きだった。すまない」
 元夫の告白を聞いて、奏は言葉を失った。
(落ち着け……落ち着くのよ、私……)
 離婚後にして、初めて元夫から熱烈な告白を受けた奏は、少しぬるくなったミルクティーをゴクゴクと飲みながら、目の前で相変わらずうつむいている和臣を見つめる。
 奏は和臣と初めて会ったときのことを思い出した。
 病院でほんの一言二言だけ会話をしたこと。しかもややケンカ腰な会話だったこと。
「……好きになられるようなこと、ありましたっけ……」
 確かに義母には親切にしたかもしれないが、和臣からしたら生意気な女だったろうと思う。自分が絶世の美女ならまだしも、奏は自分のことをどこにでもいる平凡な容姿の女だと自覚している。
 だが奏がそう言った瞬間、和臣はムッとしたように眉をひそめた。
「自覚がないのか。君は恐ろしい女だな」
「えっ……」
 なぜか叱られている。だがあの時、特別なことはなにもしていない。
「でも和臣さん……あのあと、うちにいきなりやってきて、悪いようにはしないから結婚してほしいって言ったでしょう。覚えてますか?」
「ああ。もちろんだ。どうやったら君を自分のモノにできるのか、散々シミュレーションを重ねたからな」
 和臣はため息交じりに言う。あの非常識な提案をしっかり覚えていたらしい。
「だったら……どうしてその時に、言わなかったの……? その……私のことを、好きになったって……だから、付き合ってほしいって……」
 とりあえず好きなら好きと言ってほしかったと思うのは、そんなにおかしなことだろうか。しどろもどろになりながら、奏は尋ねる。
「言えるわけないだろう」
 だが奏の問いに、和臣がクワッと眼鏡の奥の目を見開く。
「よく知らない男に、突然『一目ぼれしたから付き合ってくれ』なんて言われたら気持ち悪いだろう。しかも病院だぞ。俺が君の立場ならすぐに逃げる。そして警察に通報だ」
「えっ……いや……そ、そう……なんですか……?」
 病院で人を好きになるのは、場違いだと言いたいのだろうか。それともちょっとおかしい人だと思われるのが嫌だということなのだろうか。和臣の中で、病院というシチュエーションのなにがいけないのかはよくわからないが、妙に強く言われて思わずうなずきそうになった。
「ああ、そうだ。だから俺はあのあと君のことを調べて、契約結婚を持ちかけたんだ」

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