皇子の溺愛
転生公女はOLの前世でも
婚約破棄されました!
【本体685円+税】

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●著:白石まと
●イラスト:すがはらりゅう
●発売元:三交社
●発行元:メディアソフト
●ISBN:978-4-8155-2049-6
●発売日:2020/3/25

必ず守る。今度こそ、絶対だ

「ほしいなら強請れ。わがままを言え。『あなた』を抱きたいんだ」公女ルフィーナは、皇子ヴィルハルトと交わした婚約を突然破棄された衝撃で、同じく婚約破棄され理由も知らず死んだ前世を思い出す。同じことは繰り返すまいとヴィルハルトに会って真意を質そうとするルフィーナ。侍女に扮した彼女はヴィルハルトに気に入られ、彼の秘書官としてその補佐をすることに。間近で接して、ますますヴィルハルトを好きになってしまうが!?




「婚約が破棄された? なぜでしょうか。グレイド帝国の皇子殿下ヴィルハルト様との結婚は、私が三歳のときに政略的な意味合いで決められたはずです。それが、十五年も過ぎたいまになって密使が来ただなんて……!」
両国の間に、ことさら争うような問題が起きたとは聞いていない。政略結婚が組まれた意義は、いまなお生きているというのに。
悲鳴のような声を上げたルフィーナを、父親は痛ましげに眺めた。
血気盛んな四十代のエルト公の中では、なにより怒りが大きく膨らんでいたようだ。身体の横に下げた両手の拳が強く握りしめられている。
「密使とはいえ正式な書状を持ってきた。お前の言う通りこの縁談は、かつて帝国から分離したわが領土を、再び帝国に戻すための政略結婚だ。双方納得の上で約定まで交わしている。それをいまさら、なんの説明もなく一方的に……!」
父親は床に向かって吐き捨てる。ルフィーナは戦慄く唇を叱咤してさらに尋ねた。
「それで、お父様はどうされるおつもりですか」
「受け入れる。……確認は、せねばならないがな。私が帝都の皇帝宮まで行って本人に確かめよう。お前も心の整理だけは付けておきなさい」
エルト公はこうと決めれば梃でも動かない。ルフィーナは蒼褪めた。
「私はずっとヴィルハルト様との結婚を夢見てきましたのに。一度もお逢いしたことがなくても、ずっと――」
「いいか。皇帝陛下のご判断というより、皇子殿下の決断だ。ヴィルハルト様のサインもあれば、印璽も押してあった。殿下本人からの申し入れである以上、このまま無理に推し進めても、この結婚はお前を幸せにはしない」
「……そんな、ことは」
言葉もなく首を横に振るルフィーナの頭の動きを追って、緩くウェーブを描く褐色の髪が流れる。薄茶の髪を持つエルト公と、いまは亡き母親エルト公妃の薄いブロンドから生まれた公女の持ち物としては、ルフィーナの髪は不思議なほど濃い色をしていた。
数筋を前髪として額に残し、横髪の一掴みを後ろに回して一つに括っている。豊かな後ろ髪は背中を覆い、彼女の白い肌を魅惑的に引き立てた。
細身なのに胸と腰が女性らしいふくよかさで張っているルフィーナは、十八歳らしいエネルギーに溢れた姿をしている。
ところが、彼女の藍色の瞳は潤み、肺活量が少なくて思うまま主張もできない細い声は発せられず、ただ表情を曇らせることしかできない。
今にも消えてなくなりそうなか弱いルフィーナは、心に受けた打撃に耐えきれなかった。すぅっと意識を遠のかせてゆく。
「ルフィーナ……っ!」
エルト公は娘へ手を伸ばして、倒れてゆく身をどうにか受け止める。
「誰か! 医師を呼べ!」
彼女が意識を失くす直前に見た光景は、バタンと扉が開き、常に公王の近くにいる侍従長が走り寄ってくるところだった。あとは沈んでゆく感覚に呑まれる。



目が覚めたとき、ルフィーナは自分の部屋のベッドの中だった。
それなのになぜか、ここはどこだと考える。
――あれ? どこなの、ここ……って、私の部屋? 天蓋付きベッド……?
パチッと目を見開いたルフィーナは、自分の中に二つの記憶があるのに気が付く。
――えぇ……っと。私は、ルフィーナ・トゥ・エルト。十八歳。エルト公国のただ一人の跡継ぎで公女。それから。
私は小坂祥子――だった。二十六歳。夏真っ盛りに寝不足で都内をさまよったあげく、熱中症になってあえなく人生を終えた。
〈猪突猛進の第一秘書〉という二つ名を持つ働きすぎのOL。それが前世。
――ルフィーナとしての記憶はきちんと持っているわ。それに被さって薄く別な記憶がある。ぼやけているけど、前世の記憶? 本当に?
今の自分がルフィーナであることは、はっきりしている。
「前は二十六歳だった……。八歳も年上だったのね。ふふ……、若返ったんだ」
奇妙な気分になって、乾いた笑いが出てしまった。
前世で得た知識や経験はかなり明快に思い出せるが、生きていた記憶は薄く、人としての存在感はほとんどない。
ルフィーナは、がばりと起き上がる……つもりが、くらくらと貧血を起こしたような按配で額を押さえた。上半身を起こしただけで動きを止める。
――いまの私は、虚弱体質だった……。体力がなくて、すぐに風邪を引くのよね。前はあんなに元気だったのに。
ベッドの上から周囲を眺める。
見慣れた自分の部屋でも前世の記憶を持つ目で見ると、また別な見方になった。
――広くて豪勢な部屋だわ。公女だものね。寝室としての機能と、リビング仕様のソファセット……。違和感があるわけではないから、本当に少しだけ別の記憶を戻した感じ。
影響は受けるようで、性格的な面がわずかに変わった気がする。
――わずかに?
いままでは、身体が弱いせいもあってなにもできない己の状態を甘んじて受け入れ、現状を哀しむだけのふわふわとした毎日を過ごしていた。半分以上眠っている状態だ。
それがいま、地に足が付いて自分自身の重量を認識できる。生きている人間としての重量だった。しかし。
――前世の記憶を少しばかり戻したからといって、目の前の問題は解決しない。ヴィルハルト様に婚約を破棄されたのよ。……そういえば、前世でも同じことがあったわ。
小坂祥子が熱中症になったのは、婚約者から婚約を解消すると伝えられたのがあまりにもショックで眠れない夜を過ごしたあげく、夏真っ盛りの太陽の下を暑さに対する予防もせずにさまよい歩いたからだ。
愕然としたルフィーナは声を上げる。
「な、なんてこと! 生まれ替わっても婚約破棄だなんて……っ!」

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