初恋夫婦
ロマンスは軍人侯爵様と
【本体639円+税】

amazonで購入

●著:麻生ミカリ
●イラスト:ウエハラ蜂
●発売元:三交社
●発行元:メディアソフト
●ISBN:978-4-8155-2003-8
●発売日:2018/05/24

これであなたは俺の花嫁ですよ

困窮する実家のため葛城侯爵に嫁げと言われた芳谷紫野は、以前に恋した書生の久我東鷹を忘れられず家を出ようとする。だが、その矢先、当の東鷹が彼女の前に現れた。彼こそが遠縁の家を継いだ葛城侯爵だったのだ。「今夜が俺たちの初夜だとあなたの体と心に刻ませてもらいましょう」かつて、彼の愛を裏切ったと思い、結婚し結ばれてからも素直になれない紫野に東鷹は執着する。想い合いながらもすれ違う新婚夫婦の恋の行方は!?




唐突に。
なんの前触れもなく、紫野の体を抱きしめていた両腕が、淫靡に蠢く。手のひらが胸の膨らみを着物のうえから弄り、紫野はヒッと小さく声をあげそうになった。
「もう、誰も俺を止めることはできません。葛城家では、俺が何をしようとあなたを助ける者などいないのです。――その意味が、わかりますか?」
「やめ……やめて、放して……っ」
必死に体を捩るけれど、細身に見えても東鷹は男だ。大きな手に乳房をつかまれ、紫野は逃げることもかなわない。
「あなたは俺のものです。俺の妻となるのです」
だから――と、東鷹が耳元に唇を寄せた。
「いくら声をあげてもかまいませんよ。愛らしい声を、俺に捧げてください」
反論しようと開いた唇が声を出すよりも早く、着物の襟元に彼の手が伸びる。そして、合わせを乱暴に左右に押し広げた。
「あっ……! い、嫌っ!」
白くすべらかな乙女の肌が、空気に触れる。誰にも触れられたことのない乳房が、東鷹の手で直になぞられる。
その言い知れぬ感覚に、紫野は体を強張らせた。
「なんて……美しいんでしょうか。紫野さん、あなたの体をずっと求めていました。俺の知らないうちに、あなたはこんなにも女らしく、やわらかな体つきになっていたんですね」
「し、知らないくせに……わたしのことなんて、何も……」
「知っています。気高く清廉な、紫野お嬢さん。あなたのことなら、俺はなんだって知りたいと願っていたのですから。そう、あなたが三角財閥の御曹司と婚約されていたことも、婚約を破棄されていたことも――」
膨らみの裾野から、両の手のひらでやんわりと乳房を包むと、東鷹がせつなげに息を漏らす。
「たとえあなたが生娘でなくともかまいません。三角の御曹司に抱かれていたとしても、あるいはほかの男にその身を委ねた過去があったとしても、俺は――俺には、あなたしかいない。あなたと出会う以前は恋を知らず、あなたと出会ってからは世界でただひとり、あなただけが想う女性となったのです。俺にとっては、あなただけが――」
「やめて、や、嫌だ……!」
胸を持ち上げる手が、左右の頂点を指先であやす。触れられたことで次第に輪郭を強く描きはじめた先端は、彼の指に捏ねられてひどく屹立してしまう。
――わたしだって、恋した相手は久我しかいない。男のひとに触れられたことなんてないのに、こんな無理やりだなんて……
生娘でないと疑われたのも悲しいが、好きで好きでたまらないほどに焦がれた男に陵辱されかけている現状にも耐えられない。
屈辱に肩を震わせ、唇をわななかせる。
そんな紫野を、東鷹がくるりと自分のほうに振り向かせた。
「泣いてもやめませんよ」
「……なぜ? やはりわたしを恨んでいるのではないの?」
あらわになった乳房を、彼の目がとらえる。ツンと突き出た部分が、視線を感じていっそう敏感になるのが悔しい。
「恨んでなどいません。ただ、あなたがほしくて、あなただけを求めて生きてきました。けれど――」
背の高い東鷹が、腰をかがめる。
彼の唇が、左胸の膨らみに触れた。
「こんな愛しいものだと知っていたならば、あのとき何があってもあなたを奪っていたかもしれません。女性の体とは、なんとやわらかいのでしょう……」
「ぁ……っ……!」
ちゅっと音を立て、東鷹は紫野の胸をついばむ。色づいた部分を避ける唇が、何度も何度も愛しさを伝えようと接吻を繰り返した。そうしているうちに、触れられない部分がもどかしく凝るのを、紫野にはどうすることもできない。
――嫌だ。どうして、わたし……
それどころか、そこにくちづけてほしいと本能が訴えている。
指で触れられるだけでも、腰に甘い疼きを広げるその部分に、東鷹が赤子のように吸い付いたなら、どんな感じがするのだろうか。
「駄目……、駄目よ、久我……」
「東鷹と呼んでください。紫野、俺はあなたの記憶のなかの書生ではないのです。もう、別の男となったのですから」
では、紫野の愛した男はどこに行ってしまったのか。
ここにいるのは、かつて久我東鷹だった男。そして今は、葛城東鷹となった男。
「と……東鷹……」
その名を口にするだけで。
心臓が肋骨を突き破ってしまいそうなほど、激しく高鳴る。
「ああ! 紫野さん、紫野……!」
同じ気持ちでいてくれるのか、東鷹も興奮した様子で白肌に熱い唇を押しつけてきた。わずかに、彼の唇の端が胸の頂をかすめる。
「やっ……あ、駄目、駄目ぇ……」
子どものように、イヤイヤと首を横に振ると、長い髪が胸元を遮る。それを手でよけて、東鷹がもったいつけるように紫野の乳暈に舌を這わせた。
「ひ……っ……、そこ、嫌、いやぁ……」
「嘘つきですね、お嬢さん。あなたの体は、俺に触れられたくてこんなに淫らになっているのではないのですか? 教えてください。俺は女を知りません。ここを――吸ってもいいですね?」
駄目、嫌、と小さく声を漏らす。
けれど、胸の内では逆の言葉が聞こえていた。
「紫野……とてもかわいらしいですよ」
ちろ、と舌先が先端をかすめていく。
ほんの一瞬の刺激。ただそれだけで、紫野は強く体をしならせた。
「ああ、危ない! 立ったままではいけませんね」
言うが早いか、東鷹が紫野を強引に抱き上げ、長椅子に押し倒す。
「東鷹、お願い……、もうこんなことやめて。わたし、わたしは――」
――わたしだって、こんなことをされるのは初めてなのに……
清廉な美貌が、今は恐ろしいほどに美しい。紫野を支配する獣は、その身をもって彼女の抵抗を押しつぶす。
東鷹の重さを感じて、紫野は唇を噛んだ。
――もう、逃げられない。
彼がなんと言おうと、この行為に愛情があるとは感じられなかった。紫野に屈辱を味わわせ、あの五年前の罪を贖わせようとしている。そうとしか感じられないのだ。

☆この続きは製品版でお楽しみください☆

amazonで購入

comicoコミカライズ
ガブリエラ文庫アルファ
ガブリエラブックス4周年
ガブリエラ文庫プラス4周年
【ガブリエラ文庫】読者アンケート
書店様へ
シャルルコミックスLink
スカイハイ文庫Link
ラブキッシュLink