不機嫌な軍人皇帝と
泣き虫おさな妻

甘い寵愛に溺れて
【本体685円+税】

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●著:すずね凜
●イラスト:駒城ミチヲ
●発売元:三交社
●発行元:メディアソフト
●ISBN:978-4-8155-2006-9
●発売日:2018/7/25

可愛いから、もっと泣かせたくなる

祖国の窮状を救うため、ドルガム帝国に側室として差し出されたリーゼロッテ。皇帝ゴッドフリートは人身御供の妃など不要だと撥ねのけるが、泣きじゃくりつつも退かないリーゼロッテに根負けして滞在を許す。小国の王女だとの蔑みにも耐え、健気に振る舞う彼女にゴッドフリートは「ああ甘美だ。この肌、この声、たまらないよ」と優しく触れる。身も心も彼に捧げ愛され幸せなリーゼロッテだが皇姉カテリーナの嫌がらせは激化して!?




「ふえ……ぇ、ええ……ん、えん……」
一度泣き出すと、悲しみが恐怖に拍車をかけ、とめどなく涙が溢れてきた。
ぽたぽたと膝の上に涙が滴る。
「困ったな――泣かせるつもりはなかった。私は君に無理強いは――」
ゴッドフリートは言葉に詰まったように押し黙った。
彼は怒り、呆れ果てているのだろう。偉そうに子どもじゃないなんて豪語したのに、ベッドに来た途端この体たらくだ。
自分だって、こんな子どもっぽい態度を取るつもりではなかった。でももう、恐怖だけが気持ちを支配していた。
「う……ひっく、うぅ、ひっく……」
両手に拳を当てて、まるで赤ちゃんみたいに泣きじゃくってしまった。
「君――リーゼロッテ」
初めて名前を呼ばれ、はっと涙に濡れた顔を上げた。
ゴッドフリートの表情は、困惑していたが怒っているようには見えない。
ふいに彼はひょいとリーゼロッテの小さな身体を抱き上げる。
「あ――」
熱く引き締まった男の腕に抱かれ、驚きのあまり一瞬涙が止まる。ふわりとシャボンのよい香りが鼻腔を擽った。
「怯えなくていい――泣かないでくれ」
背中を優しく撫でられた。大きくて温かい掌だ。
「ひっく……すん、ぐすん……」
まだひくひくと肩を震わせていると、長い指が細い顎を持ち上げた。
「あ――?」 
スミレ色の目を見張る。
驚くほど美麗な顔が寄せられて、額や涙に濡れた頬に唇を押し当てられた。
その柔らかい感触に、なぜかぞくっと背中が震える。
「いい子だ――泣かないで」
ゴッドフリートの唇が、涙を拭う。
「ふ……ひく……ふ……」
なんだか気持ちが落ち着いてくる。
男の大きな胸に抱かれてこわいはずなのに、守られているような安心感すら覚えた。
「そう――いい子だ、泣き止んで――そうだ」
ゴッドフリートが片手を伸ばし、ベッド際の小卓の上を探る。
それから、彼は再び顔を寄せてきた。
唇が重ねられる。
「んっ……」
始め、何をされているかわからなかった。
それは、生まれて初めての口づけだった。
ふいを突かれてぽかんとしていると、素早く男の唇が離れ、再び触れてきた。
今度は強く押し付けられ、思わず唇を開いてしまった。
ぬるりと熱いものが侵入したかと思うと、ふいに花の香りと甘い味が口腔いっぱいに広がった。
「ん、ん……?」
スミレの香りと砂糖の蕩ける感じ――。
ゴッドフリートが唇を離し、かすかに微笑む。
「美味しいか?」
リーゼロッテは答えられない。
この味――。
覚えている――この懐かしい味は――。
考える間も無く、またしっとりと唇を覆われた。
「あ……」
ゴッドフリートの濡れた舌が、歯列をなぞり歯茎を舐め回す。
口づけがこんな悩ましいものだとは、生まれて初めて知った。
戸惑い狼狽えているうちに、男の舌はさらに奥に侵入してくる。
怯えて縮こまっていたリーゼロッテの舌を、分厚いゴッドフリートの舌が捉えて、絡んできた。
「ん、んぅ……っ」
ちゅーっときつく吸い上げられた途端、頭の中で何かが弾け、身体が強張った。
どうしていいかわからないでいるうちに、何度も強く舌を吸い上げられ、息継ぎもできないまま頭がぼんやり霞んでいく。
くちゅくちゅと猥りがましい音が響き、うなじの辺りが熱を帯び、次第に身体の力が抜けてしまう。
「……ふ、ぁ、ふぁ……」
顔を背けようとすると、ゴッドフリートの大きな手が頭を抱えて固定してしまう。彼はそのまま顔の角度を変えては、深く激しい口づけを続けた。
あまりに情熱的な口づけに、リーゼロッテは我を失う。
こわいとか嫌だとかも感じない。
ただただ、甘美で背筋に未知の痺れが走り、それが心地よい。
こんな口腔を好きに貪られて、気持ち良くなるなんておかしい。
そう思うのに、もはや四肢からすっかり力が抜けてしまい、ゴッドフリートのなすがままになってしまう。
「や……ん、んぅ、ん、ぁ、あふ……」
溢れる唾液を啜り上げられ、舌の付け根まで強く吸われ、あまりに濃厚な口づけにリーゼロッテは意識を攫われ翻弄されるばかり――。
それは気が遠くなるほど延々と続く時間のように思われた。
ようやくゴッドフリートが顔を離した時には、リーゼロッテはぐったりと彼の腕に身を任せていることしかできなかった。口の端から溢れた唾液を、ゴッドフリートの舌が仕上げのようにぺろりと舐めとり、その卑猥な仕草に身体の芯が震える。
「は……はぁ……」
とろんとした表情でゴッドフリートを見上げると、彼はスミレ色の瞳を覗き込み、薄く微笑んだようだ。
「落ち着いたか――ほら、もう一つ。口を開けてごらん」
ぼうっとして言われるままに唇を開くと、ゴッドフリートは長い指で何かを摘まんで口元に運んだ。押し込まれたものは、甘いスミレの香りの砂糖菓子――。
「……」
口中に広がる香り高い花の匂いと共に、リーゼロッテの脳裏に昔の思い出がまざまざと蘇った。
(まさか――この人が?)
初恋の黒の貴公子様?

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