冷血な侯爵と偽りの婚約者
【本体685円+税】

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●著:火崎 勇
●イラスト:DUO BRAND.
●発売元:三交社
●発行元:メディアソフト
●ISBN:978-4-8155-2013-7
●発売日:2018/09/25

他の女などいらない、お前が手に入るなら

伯爵令嬢レオーナは、困窮する家計を助けるため、侯爵デミオンの偽婚約者になることに。親族からの縁談を断りたいというデミオンは、終始冷たく役目に必要なことすら話してくれない。だがレオーナは機転を利かせ、次々現れる親族の追及を振り切る。聡明な彼女にデミオンも心を許し始め、レオーナも彼の隠された顔を知り惹かれていく。「おまえは砂糖菓子のように甘いな」卑劣な罠から辛くも逃れた夜、二人の気持ちは急速に近付き!?




「おいで、レオーナ」
デミオンは今まで一度も見せたことのない、優しげな笑みを浮かべ、私に手を伸ばした。
自分の隣へ座れということだろう。
その笑顔のせいか、さっきまでの深い緑の服ではなく、鮮やかな青い服に着替えたせいか、一瞬ドキリとするほど素敵に見えた。
小さく「はい」と答えて彼に近づくと、椅子に座る前に差し出されていた彼の手が私の腕を取り、引き寄せる。
強い力ではなかったが、ふらついて夫人に会釈をする間もなく腰を下ろしてしまう。
私は慌てて夫人に会釈をし、「レオーナと申します」と名乗った。
「よろしく、レオーナさん。私はロザリンド・ホーソンよ」
彼女はジロジロと不躾に上から下まで私をねめ付け、名前だけ名乗ると、すぐに視線をデミオンへ戻した。私になど興味がないのだろう。
「私はてっきり冗談を言ってるのだと思ってましたよ。あなたが女性と知り合う機会などありませんもの。パーティでも、ダンスもしないと有名らしいじゃない」
そうなのか。
それは知らなかった。
きりっとして、黙って立っていればとても素敵なのだから、女性にはモテるだろうと思っていたのに。
「私も男ですからね。美しい女性に興味がないわけじゃない」
「今までチラとも彼女の話をしなかったのに?」
どうやら夫人は私という存在を疑っているようだ。
「それは彼女のご両親がご病気だったからです。そんな時に浮ついた話をするのは失礼でしょう」
「ご病気だったの? 今は?」
「亡くなられました。ですから、一人になる彼女を私の屋敷に引き取ったのです。喪が明けるまで婚約は発表しませんが、彼女を妻にする気持ちは固まっている」
デミオンはそこで言葉を切り、見慣れた冷たい笑みを浮かべた。
「ですから、爵位が欲しいなら、別のツテを探してください。おばさんが商人に嫁いだのは、裕福な暮らしがしたかったからでしょう? 商売が立ち行かなくなったからといって我が家をアテにされては困ります」
驚いた。
その驚きを隠せなかった。
だって、自分の身内にそんな冷たい言葉を投げかける人がいるなんて、思ってもみなかったのだもの。
言われた夫人が怒ることもせず、不敵な笑みを浮かべていたのにも驚いた。
「私もオーガス侯爵家の血縁よ? あなたのことを心配するのは当然だし、あなたも私に手を貸す義務があるのじゃないかしら?」
「あなたが結婚する時に祖父から持参金を貰ったことは知っています。それ以上のことはするいわれがない。親戚としての付き合いはしますが、それ以上のことは期待しないでいただきたい」
二人のやり取りは私には刺激的すぎて、胸が痛む。
この二人は、こんな言い合いをいつもしているの?
それなのに、彼女はこの家を訪れ、自分の娘をデミオンに嫁がせようと計画しているの?
ローザが彼女を歓迎しない理由がよくわかった。失礼かもしれないけれど、この方が自分の主人の義母になるのは歓迎できないのだろう。
「まあいいわ。それより、そのお嬢さんと少し話をさせて頂戴な。あなたの奥様になるなら、私だって無関係じゃないもの」
「レオーナはまだ結婚していないのだから、あなたとは関係はありませんよ」
デミオンは止めたが、夫人は私に向かって問いかけてきた。
「ねえ、あなた。デミオンとはどこで知り合ったの?」
「ホーソン夫人」
デミオンは少し声を荒らげたが、彼女は無視した。
ほらご覧なさい。こうして質問されてしまうことだってあるのよ。だから事前にもっと打ち合わせをしておくべきだったのよ。
そうは思っても今更だ。
私は自分で考え、失敗のないように答えなければならない。
「お知り合いの方にご紹介いただきました。彼のお祖父様のご友人だったそうで」
嘘はなるべく少ない方がいい。
なので、エンドル伯爵夫人が私達を引き合わせた、という事実を口にする。
「あら、伯父様の?」
デミオンのお祖父様は夫人にとって一目置いた人物らしい。攻撃的だった彼女が一瞬だけ怯む。『一瞬』だけだけれど。
「そうなの。それで、あなたはデミオンのどこが気に入ったの?」
「いい加減にしてください。彼女はまだ服喪中なんです。そっとしておいてやってください」
「いいじゃないの。ねえ、レオーナさん。是非教えて頂戴。彼が何をしているところが好きになったの? 彼が侯爵だから? この家が裕福だから? ご両親が亡くなったのなら、行く先がありませんものねぇ、後ろ盾が欲しかったんでしょう?」
自分がそうだから、あなたもそうなんでしょう。だったら私達に差はないわよね、という言いっぷりだ。
彼のどこが好きか、というのは難問だった。
彼のいいところを、まだ私は知らなかったから。
なのでこれも、真実を口にした。
「私、デミオン様のことはあまり知らないのです」
「あら」
彼女は意外な、という顔をした。
「彼がどのようなお仕事をしているか、どのような生活を送っているか。きっと私は奥様よりも知らないことが多いでしょう。けれど、知らないことを知りたいと思ったのです。もっと彼のことが知りたいと思って、こちらに参りました」
「何も知らないですって? 彼の持つ広大な領地のことも知らないというの?」
「申し訳ございません。存じ上げません。知りたいとも思いません」
「あら、あなた今知りたいからここに来た、と言ったじゃない」
心から彼を愛している女性なら、きっと答えるであろう言葉を探す。
いいえ、もし私が誰かを愛するのなら一番に思うことを口にした。
「私が知りたいのは、デミオン様というお人柄です。彼が何に喜び、何に悲しむか。私と同じことを感じてくださるかどうか、です。人を愛するということは、心を寄り添わせることです。ですから、爵位や領地よりも彼自身を知ることが一番大切なことだと思いませんか?」
夫人は返事をしなかった。
この答えは失敗? 成功?
確認するように彼に視線を向けると、デミオンは笑っていた。

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