●著:見月ゆりこ
●イラスト:ゴゴちゃん
●発売元:三交社
●発行元:メディアソフト
●ISBN:978-4-8155-2015-1
●発売日:2018/10/25
ダメだ。可愛すぎてもう限界。
『スパダリCEO』として有名な桐ヶ谷帝の秘書に大抜擢された河井今日子。実は彼のことが苦手な今日子は戦々恐々とするも、帝は彼女に気安く接してくる。ある日、彼の家に書類を届けに行った今日子は新種の伝染病に感染した疑いがあるとして、帝とふたりで家から出られなくなってしまう。不安を覚える今日子だが、帝はここぞとばかりに誘惑してくる。「いい反応。それにすごく綺麗だ」今日子も今だけだからと流されてしまい……!?
（これって……いわゆる、壁ドン？）
帝にそんな気がないのはわかっているけれども、壁に追い詰められ、真剣な表情で見下ろされると、見た目にはそうなるのは間違いない。
さらりと落ちる前髪に、焦げ茶色の瞳……形のよい唇は、続く言葉を探しあぐねているように、小さく開閉を繰り返している。
「河井、突然なんだが……」
今日子は必死にドキドキしそうになる自分を自分で宥めた。
（はいはい。落ち着け私。ＣＥＯに色っぽい意図なんかないことはわかっていますとも）
「……しばらく、ここで監禁されてくれないか？」
「はい……え？ はいぃぃぃぃぃ!?」
今日子は頷きそうになって、目を見開いた。
（今、なんて言ったの？）
「すみません。もう一度、ゆっくり、はっきりおっしゃってくださいますか」
「ここで、監禁されてほしい、と言った」
今日子は固まった。帝の意図がわからない。
実は変質的な犯罪者？ と思うにはもう彼と過ごしてけっこうな日が経っていたし、彼の目は至って正常で冷静に見える。
今日子は姿勢を正して言葉を選んだ。
「え、ええと……そうしなければならない理由と、いったい全体どういうことなのか、最初から説明していただけますか？」
しどろもどろに言うと、帝の表情が少し緩んだ。
「そういう反応になるのか……ちょっと危機意識が足りなくないか？」
笑われて今日子はむっとした。
やっぱりからかわれていたのだ。
「私のＣＥＯへの信頼をそんなふうに理解されるんでしたら、けっこうです。通報させていただきます」
持ったままだったショルダーバックから、スマホを取り出し、一一〇番に掛けようとすると、帝がその手首を掴んだ。
「悪かった……通報はやめてくれ。最初から説明する」
帝は、踵を返して今日子に付いてくるように示した。
「とりあえず、もう少し落ち着いて、座って話そう」
今日子がソファに戻ると、帝がキッチンの冷蔵庫からミネラルウォーターを出してきた。
落ち着くために一口飲むと、帝も同じようにする。
先ほどの変なテンションが収まったのか、毒気が抜けたような帝は、やはり少し深刻な顔をしていた。
「おまえには謝らないといけない」
帝がぽつりと言った。
「……どういうことです？」
いきなり謝られても、わけがわからない。
「監禁されてくれというのは別に冗談じゃない。正確には俺と一緒に監禁されてくれ、だが」
「ＣＥＯと、ですか……」
それは一人で監禁されるより問題が多いのではなかろうか。
いや自分と彼がどうこうなることなど、考えられないが。
帝は諦めたようにソファに背を付けて上を向いた。
「そうだ。なんでも俺が先日行った国のある地域で未知の伝染病が見つかったらしい」
「え……？」
今日子は目を見開いた。確かに帝は一週間ほど前、短期で外国に出張していたが。
「潜伏期間は三週間ほど。健康でも感染の疑いがある者は二週間、家から出るなと言われた。四六時中一緒にいた河井、おまえもだ。後で医者が来る」
「それって……」
今日子は息を呑んだ。
帝が慌てて言う。
「別に死んだり重症化する危険はないから、そんなに心配するな。元が健康なら熱が出る程度らしい。ただ感染力が高いのと、妊婦とか高齢者に悪影響なんで、国内で広まらないうちに水際で止めるとかいうやつだ。ただ家から出られないのが厄介で……巻き込んで本当にすまない」
「それは……別に」
唐突すぎて、頭がうまく回らないが、帝のせいではないと思う。
むしろ、帝が二週間も外に出られないことの方が重大問題なのではないだろうか。
「発症したら仕方ないから公表するが、それまではイメージが悪いので、ただの病欠にするつもりだ。河井も親御さんとかに連絡してもいいが濁しておいてくれるか？」
「はい……」
「その他にも、いろいろ根回しする必要があるな。なんとか乗り切ろう。あ、食事やら何やらは宅配で運ばせるから心配するな。河井もいろいろ注文していいぞ、着るものとか」
「あ……」
そういう問題もあるのだった。
その後、マスクをした完全防備の医者やら看護師やらが来て、検診と消毒をしていった。
帝も今日子も身体に異常はないが、やはり二週間経つまで外には出られないらしい。
これ以後も三日毎に検査を受けなければならない。
そんなこんなで、あれよあれよという間に、今日子は帝の家に�犂洞忰瓩気譴襪海箸砲覆辰討靴泙辰燭里世辰拭�
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