ツンデレ王子の新婚事情♡
殿下、初夜からすごすぎます
【本体685円+税】

amazonで購入

●著:すずね凜
●イラスト:SHABON
●発売元:三交社
●発行元:メディアソフト
●ISBN:978-4-8155-2026-7
●発売日:2019/3/25

涙のひとしずくだって、誰にも渡さない

不作に喘ぐ自国のため、大国メルトリアの王弟、ユベールに嫁ぐことになった小国の王女セレスティーナ。幼い頃から意地悪をされていたので嫌われていると思っていたが、再会したユベールは公の場だけでは仲良くしようと言ってくる。承諾した翌日から甘い言葉を囁き、優しく接してくるユベール。「ずっと君に触れたかった」美しい彼に情熱的に抱かれて蕩けていく身体。ユベールの愛が本物に思えてきて、とまどうセレスティーナは!?




最後に誓いのキスをするため、ユベールがそっとヴェールを持ち上げる。
それまで少し霞がかっていたユベールの表情がはっきりと見えた。
彼はこの上なく誇らしく嬉しげな表情をしている。まるで、この結婚を心から喜んでいるみたいだ。こちらを見つめる眼差しはあくまで優しく慈愛に満ちていて、セレスティーナは心がざわつき締め付けられる。
そんな目で見られたら、この結婚が政略だろうが偽りだろうが、もうどうでもよくなってしまう。
あの目をずっと見つめていたい。心臓がドキドキときめいて、お腹の底から愛おしさが込み上げてくる。
ゆっくりとユベールの端整な顔が近づいてくる。
セレスティーナはそっと目を閉じる。
柔らかく唇同士が触れ合ったとたん、身体中に雷みたいな甘い痺れが走り、幸福感に包まれる。
唇が離れる瞬間、ユベールがしみじみした口調でつぶやいた。
「やっと――君を手に入れた。もう、離さないよ」
セレスティーナはその口調に胸を衝かれて、はっと目を見開く。
(どういう意味? いまのセリフも、お芝居?)
すでにユベールは自分の横に移動していて、視線をとらえることはできなかった。
その後の婚姻パレード、国内外の賓客との晩餐会、無礼講の舞踏会、その度に豪華なドレスに着替え、新しく髪を結った――めまぐるしく長い長い一日が終わったのは、夜半過ぎだった。
侍従に案内され、ユベールとセレスティーナは夫婦の部屋に向かう。
(そういえば、夫婦の部屋に入るのは初めてだわ……)
今日からユベールと二人、一つの部屋で暮らす生活が始まる――。
緊張と期待で胸がばくばくする。
王城の最上階の突き当たりの南側の部屋の前まで案内すると、侍従は頭を下げて引き取った。
それまで無言でいたユベールが、ドアノブに手をかけてからふと、思いついたようにこちらを振り返る。
「セレスティーナ」
深夜だからか声を潜めて名前を呼ばれ、それがぞくりとするほど色っぽかった。
と、いきなりふわりと横抱きにされる。
「あっ」
驚いて反射的にユベールの首にしがみついてしまった。
彼の襟足から濃厚なオーデコロンの香りが立ち上り、クラクラする。
「お、おろして……」
小声で訴えたが、ユベールはそのままドアを開けて部屋の中へ入った。
改装したての夫婦の部屋は広々として、緑のつる草模様の壁紙と淡いモスグリーンの調度品で統一され、深い森の中にいるような気分になる。大きな大理石の暖炉。テーブルと椅子、長椅子、チェストだけの家具で、ゆったりとした落ち着いた雰囲気だ。
「今日からここが、私たちの部屋だ。とりあえず整えたので、不足なものは後からいくらでも秘書官のエングに申し出てくれ」
セレスティーナを横抱きにしたまま、ユベールは部屋の中をゆっくり歩き回る。
応接間だけでも、グランデ城の広間ほどもある。
「奥が化粧室と浴室、その向こうに寝室がある」
ユベールはそのまままっすぐ寝室に向かった。
暖炉の熾火だけの薄い灯りの中に、部屋の中央に鎮座している立派な四柱の天蓋付きベッドがあった。
「私たちの寝室だ」
大人が五人ほども横になれそうなその大きなベッドを目にした途端、セレスティーナはぶるっと身が震えた。
あそこでユベールと寝る――それは、夫婦の営みを行うということだ。
嫁ぐ前、年取った家庭教師から夫婦の営みについての教えは、少しだけ受けていた。
男と女が裸になって抱き合う行為らしいと、うすらぼんやりとわかっていたが、結局のところは何をどうするのかは、「夫となる人にまかせて、じっと耐えていればいいのです」と言われて、詳しいことは理解できないままだった。とにかく、子を成すために我慢しろということらしい。
セレスティーナの怯えを感じ取ったのか、ユベールが耳元でささやく。
「私が、こわいか?」
セレスティーナは心臓が早鐘を打ち出すの感じた。
おずおずとユベールを見上げると、彼は今まで見たこともないような熱を帯びた危険な表情をしていた。
獲物を狙う猫科の獣のような妖しい眼差し。その目に射すくめられたみたいに身が強張る。
「い、いいえ……」
強がって言ってみたが、声が震えていた。
ユベールが薄く微笑む。
「怖がらなくていい。君がいやがるようなことは、しない」 
そう言うと、彼はベッドの上に仰向けにセレスティーナを横たえた。
「あ……」
ユベールがそのまま自分の服を脱ぎ始める気配がしたので、セレスティーナは慌てて身を起こそうとした。
「ま、待って……あの、湯浴みをしないと……」
「かまわない」
ユベールは上着を放り出し、シャツのボタンを外していく。厚い胸板が露わになって、セレスティーナは心臓がどくんと妖しく脈打ち、慌てて目を逸らした。
まだ心の準備が……。でも、準備ってなにをどうするの?
「で、でも、夜会ドレスを脱がなくては……あの、寝巻きに着替えて……」
声が上ずる。
ユベールが上半身裸になり、ぎしりとベッドを軋ませて上がってくる。引き締まって無駄肉のまったくない美しい肉体が目に入り、ますますうろたえた。
ユベールが覆いかぶさるようにして、セレスティーナの顔を覗き込む。
「かまわない、どうせ脱がしてしまうんだ」
「や……」
彼の青い目に情欲の炎を感じ、全身の肌が粟立つ。
ユベールの手がそっと頬に触れてきて、びくりと身が竦んだ。
「そんなに怯えて――」
つつーっと指先が頬から唇を撫でた。そんな何気ない仕草にも、淫らな空気を感じてしまう。ばくばくと脈動が速まり、頭がのぼせてくる。唇が小刻みに震えた。
「セレスティーナ」
自分の名前をこんなにも色っぽく呼ばれたことはない。
ユベールの青い目を見ていると気持ちが掻き乱されるので、思わず目を閉じる。
彼の息遣いが近づいてくる気配がして、唇をそっと塞がれた。
「ん……」

☆この続きは製品版でお楽しみください☆


amazonで購入

comicoコミカライズ
ガブリエラ文庫アルファ
ガブリエラブックス4周年
ガブリエラ文庫プラス4周年
【ガブリエラ文庫】読者アンケート
書店様へ
シャルルコミックスLink
スカイハイ文庫Link
ラブキッシュLink