孤高の王は
囚われの姫から愛を知る
【本体685円+税】

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●著:七福さゆり
●イラスト:ウエハラ蜂
●発売元:三交社
●発行元:メディアソフト
●ISBN:978-4-8155-2035-9
●発売日:2019/11/25

もう一度抱いて奪ってやろうか

不吉な金色の目のせいで、神への生贄にされることになったフィーネ。だが泉に沈められる寸前、スティヒタイト国王ジークハルトの目に留まり、花嫁として連れ帰られる。人を愛することができないジークハルトは、命と引き換えに自分の妻となり子を産んでくれと言う。「お互いより気持ちよく、楽しくできる方がいい」優しく気遣い抱いてくるジークハルトに惹かれるフィーネだが、彼の負担にならないように気持ちを隠すしかなく!?




そっとカーテンを開けると、月明かりに照らされた海が見えた。
なんて綺麗なのかしら……。
時間を見つけては、こうして海を眺めている。
まさか自分が、海を見ることができるなんて思わなかった。
何度見ても飽きない。海はなんて美しいのだろう。
うっとり眺めていると、遠くから足音が聞こえてきた。
衣擦れの音や歩幅で、ジークハルトだとわかる。視力を使うようになっても、相変わらず耳はいいままだ。
ジークハルトが扉の前に立ったところで、扉を開いた。
「ジークハルト様、ご政務お疲れ様です」
「またノックをする前に開けられた。俺じゃなかったらどうする。危ないぞ」
入浴を済ませたばかりのようだ。毛先が少し濡れている。シャツとトラウザーズだけの簡素な恰好だが、宝石で飾り立てるよりも美しい。
人間の若い男性は皆こんなに美しいのかと思ったが、船の中で働く者たちを見ていると、そうではないと気が付いた。
ジークハルトの美しさは特別のようだ。彼のように顔立ちが整った男性は、今のところ見たことがない。
「大丈夫ですよ。足音でジークハルト様だとわかりますから」
「野生動物のようだな」
「ふふ、運動神経も野生動物のようだったらよかったのですが」
「今はド下手なダンスも、慣れたらそこそこになるだろう」
「そうですね。まずはちょっと下手なダンスを目指して、頑張ります」
「堅実だな。まあ、頑張れ。時間が空いた時には、また付き合ってやる」
「はい、ありがとうございます」
ジークハルトは机の上を見て、置いたままになっていた書き取りの練習をした紙を持ち上げる。
「まだ読み書きの練習をしていたのか?」
「ええ、でも、途中でうたた寝をしてしまいましたが」
「連日、睡眠時間を削って学んでいると聞いている。無理をせずに、しっかり眠った方がいい。義務感で無理をしているのなら……」
「いえ、義務感ではございません。単純に学べることが楽しいだけです。読み書きを覚えたら、学習の幅も広がりますし、早く習得したいです」
「そうか。それならいい」
「ジークハルト様、今夜も何か教えてくださるのでしょうか」
フィーネは期待に瞳を輝かせて、思わず身を乗り出してしまう。
「ああ、お前の期待しているものではないかもしれないが、妃になってもらうからには必要なことだ」
「いいえ、ジークハルト様から教えていただくことは、どれも興味深いです。妃として必要なこと……どんなことでしょうか」
「夫婦の営みだ」
腰を抱き寄せられ、心臓が大きく跳ね上がる。
「夫婦の営み……と言いますと、お子を作る行為のことでしょうか?」
「ああ、そうだ。それでも興味深いか?」
意地悪な笑みを浮かべられ、フィーネは目を泳がせる。
「え、えっと、それは……」
「侍女に最低限のことを教えておくように命じたが、その様子を見ると教わったようだな」
「はい、一応……」
侍女から教えてもらった子を成す為の行為――とても衝撃的な内容だった。
まさか子を作るのに、そんな恥ずかしい行為をするなんて……。
見る見るうちに真っ赤になるフィーネを見て、ジークハルトがククッと笑う。
「衝撃的な内容だったようだな」
「とても……」
「まあ、誰もが最初に知った時は、戸惑うものだ」
「ジークハルト様も、戸惑われましたか?」
「多少な」
「本当ですか? なんだかジークハルト様は、どんなことでも全く動じないような気が致します」
ジークハルトはどっしりと構えて、どんなことがあっても動揺しない。とても頼りがいのある男性だ。
「鈍感な男呼ばわりするとは、随分酷い女だな?」
「えっ! そういう意味では……んっ」
否定の言葉は唇ごと奪われ、フィーネは戸惑いながらもジークハルトに身を任せた。彼は何度も角度を変えながら、赤い唇を味わう。
不思議だ。
唇と唇を合わせ、吸われると、どうしてこんなにも気持ちがいいのだろう。
「ん……うっ……」
薄らと開いた唇を割り、肉厚な舌が侵入してくる。狭い咥内を隅々までなぞられ、舌をヌルヌル絡められると、あまりの快感に震えてしまう。
「震えているな。怖いのか?」
「い、え……気持ち、よくて……」
ジークハルトは満足そうな笑みを浮かべ、再びフィーネの唇を深く奪った。
「んっ……んぅっ……」
ちゅ、ちゅ、と、濡れた音が部屋の中に響く。
どうしてだろう。触れられているのは唇なのに、なぜかお腹の奥が切なくなる。膝がガクガク震えて、力が入らない。
儀式で薬を飲まされた時みたいだわ。
違うのは、とんでもなく気持ちいいということだ。
「んっ……ぁっ……」
とうとう立っていられなくなり、フィーネは膝から崩れ落ちた。しかしジークハルトがすかさず支えてくれたので、床にへたり込まずには済んだ。
「口付けだけで立っていられなくなったのか? 随分と感じやすいな」

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