●著:小出みき
●イラスト:旭炬
●発売元:三交社
●発行元:メディアソフト
●ISBN:978-4-8155-4030-2
●発売日:2020/09/30
一目惚れに理屈はあるのか?
不吉な色の瞳を忌まれていた皇女アディーヤは、停戦条約の一環で亡き母の故国ヴァジレウスの皇帝リュークヴェルトに嫁ぐ。暴虐帝との噂に反して彼は有能で優しい美丈夫だった。「頭で理解できなくても身体はわかってる。こんなにしっくりとなじんで…」夫に溺愛され、人生で初めての幸せを知る彼女だったが、二人の命を狙う幾つもの陰謀に襲われて…!?
「おまえが好きだ。俺と結婚してほしい」
「も、もうしてます……けど……!?」
「政治上はな。だが俺は、俺個人としておまえを妻にしたい。生涯ただひとりの妻に」
鼓動が跳ね上がり、アディーヤは両手で胸を押さえてリュークヴェルトを見つめた。
「わ……わたしで……いいのでしょうか……?」
「アディーヤでなければいやだ。たとえおまえがサルタナ皇女でなかったとしても、関係ない」
「で、でも。わたし、この国では……ひどく平凡で……」
「平凡? どこがだ」
「舞踏会で……ひとりでいたら、お妃だと気付かれなくて……馬鹿にされてしまったし……」
情けなさにしどろもどろになると、リュークヴェルトは眉を吊り上げた。
「誰が馬鹿にした!? 名を言え、厳罰に処す」
「わ、わかりません。すみません!」
「まだ誰が誰やらわからんか……。今夜のことは、俺も悪かった。もっとアディーヤの顔が大勢に見えるようにすべきだったな。ジャニーンが取り違えられるのも予想すべきだった」
「あ、あの。ジャニーンは悪くありませんから」
「わかってる。──そうだ、肖像画を描かせよう」
いいことを思いついたとリュークヴェルトは顔を輝かせた。
「アディーヤの肖像画を描かせて皇宮のあちこちに飾っておけば、どんな粗忽者でも顔を覚えるはずだ。二度と無礼なまねはさせないぞ。そうだ、執務室にも飾ろう。さっさと仕事を終わらせてアディーヤをかわいがりたいと思えば、ぐんぐんはかどるに違いない。──ところで返事は?」
唖然とするアディーヤに、リュークヴェルトは真顔に戻って尋ねた。
「は、はぃ?」
「俺と結婚してくれるのか、だめなのか」
「だめなわけありません!」
「じゃあ、いいんだな?」
気圧されたアディーヤは小さく喉を震わせ、思い切ってこくんと頷いた。
「リューク様と、結婚します」
端整なリュークヴェルトの顔が、ぱぁっと輝くような喜びに満たされていくのを、アディーヤはどきどきしながら見つめた。ふだん帝王然として謎めく微笑を浮かべ、容易に真意を読み取らせない彼が、今は素直に喜びを表している。
彼の顔が近づき、唇がそっと重なった。
「誓いのキスだ」
リュークヴェルトは微笑んで、ふたたび唇を合わせた。目を閉じて、優しい感触にうっとりと身を委ねる。
彼はついばむように何度もアディーヤの唇を吸った。ちゅっ、ちゅっと軽く吸っては離すたびに、胸が甘酸っぱくなるような音がする。
気がつけばベッドに横たえられ、熱っぽくくちづけられていた。優しく頬を撫でられ、心地よさにゆるんだ唇のあいだから舌が滑り込む。驚いたのは最初だけで、すぐにぞくっとするような感覚に攫われた。
不思議な質感の熱が口腔を探るように這い回り、とまどうアディーヤの舌を絡め取る。
「んっ……」
鼻にかかった声を洩らし、胸を大きく喘がせる。とろりと潤んだ瞳を深く覗き込まれ、くらくらと目眩がした。浅緑と銀灰の瞳が混じり合い、えも言われぬ魅惑に、魔術にでもかけられた気分になる。
彼の指が夜着の胸元を器用にくつろげ、ゆるやかに上下しているふくらみを大きな掌が優しく包んだ。揉みほぐすようにやんわりと捏ねられ、こそばゆさと同時に疼くような快感を覚える。
「ぁ……!」
きゅっ、と軽くひねるように先端を摘まれて、思わず顎を反らした。のけぞる白い喉元を、リュークヴェルトは大きく舌を出してゆっくりと舐め上げる。
「あ……っ、ぁん」
熱い舌が直接触れている部分はくすぐったいのに、まるでかけ離れた場所が針で突かれたようにズキッと痛む。アディーヤは焦って肩をすぼめた。
「……どうした?」
笑みを含んだ声が耳元で聞こえたかと思うと、舌先が耳殻の溝に沿って淫靡に蠢く。
「んんッ……、ひや……、く、くすぐったいです」
「アディーヤは感じやすいんだな。かわいいぞ」
甘やかす口調で囁かれ、こりっと耳朶を食まれる。
くっと顎を反らし、濡れた唇を噛みしめると、機嫌を取るように頬から肩にかけてゆっくりと撫でさすられた。
「感じているなら素直に声を出せ。でないとわからない」
「で、でも」
「恥ずかしいのか」
瞳を潤ませて小さく頷くと、彼は目を細めて顎下を撫でた。
「かわいいな」
彼は身を起こし、簡素な白い夜着を無造作に脱ぎ捨てた。帳のなかの薄闇に浮かび上がる頑健な体躯に思わず見とれてしまう。幼い頃は病弱で、後継者の候補にも入れなかっただなんて、とても信じられない。
顔を赤らめて見上げていると、彼はニヤリとした。しなやかな野獣めいた獰猛さがかいま見え、視線ばかりか心まで強く惹きつけられてアディーヤはどぎまぎした。
背の半ばまである金髪が、しどけなく落ちかかるさまにも不思議な色香が匂いたつようで、ますます鼓動がせわしくなる。
彼は果物の皮でも剥くようにアディーヤの夜着を取り去り、ベッドの足元に放り投げた。反射的に胸元を隠そうとすると、優しく手首を掴まれた。
「ちゃんと見せろ。綺麗なんだから」
直視されるのはやはり気恥ずかしくて横を向いた。視線を意識すると勝手に乳首が尖ってしまい、いたたまれない気分になる。
ふいに身をかがめたリュークヴェルトが、敏感な先端をぺろりと舐めた。
「ひゃっ……!?」
「甘い」
ニッと笑って、彼は薔薇色の乳暈ごとぱくりと口に含んだ。
「あっ、やっ……」
反射的に逞しい肩を掴み、ビクッと身を縮める。じゅっと強く吸われたかと思うと、ぐるりと円周を舐め回し、舌先で弾くようにして転がされた。
同時に両の乳房を鷲掴み、掌全体を使って円を描くように大きく捏ね回される。
「は、ぁ……、あ……ん……ッ」
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