高嶺の花の勘違いフィアンセ
エリート副社長は内気な令嬢を溺愛する
【本体1200円+税】

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●著:玉紀直
●イラスト:上原た壱
●発売元:三交社
●発行元:メディアソフト
●ISBN:978-4-8155-4066-1
●発売日:2021/9/30

自信がついたって思えるまで愛してやるから、覚悟しろ

親が決めた婚約を嫌って家出した姉、美咲の代わりに、事故で頭を打った彰寛の看病をする美優。年上の幼馴染みである彼は美優にとって近くて遠い犢睥罎硫岫瓩世辰燭、事故の衝撃で美咲のことを忘れた彰寛は、献身的な美優のことを自分の婚約者だと信じて溺愛する。「ずっとこうして美優を感じたいと思ってた」好きだった相手に抱かれて幸せを感じるも、本当のことを言えず苦悩する美優は―!?




「それならいっそ、一緒に暮らさないか、美優」
 肝心なことを忘れている脳は、ときにとんでもない提案を弾き出す。
 言葉を失い、美優は彰寛を凝視する。当の本人はクスリと面映ゆい表情で笑い、同席する両家の親に顔を向けた。
「父さんは俺一人をマンションに帰すには不安だと言うし、美優は様子を見にきてくれると言うし、おじさんとおばさんは美優に毎日でも行ってあげなさいと言ってくれる。それならいっそ、一緒に住んだほうがいいと思うんですよ。なんといっても俺たちは……」
 美優はハッとする。言葉を失っている場合ではない。この自由発言を放っておいたら、彰寛は美優が自分の婚約者なんだという勘違いを両家の親の前でさらしてしまう。
「あきひっ……」
 声を絞り出そうとした美優だったが……、彼女の制止は、間に合わなかった……。
「すでに婚約しているのだし。問題はないでしょう」
(ああっ! 言っちゃった!)
 美優の動きは、彰寛を止めようと手を伸ばしかかったところで止まる。
 笑顔とも焦りともつかない表情を固めたまま首を動かした先には、やはり先ほどの美優のように言葉を失い唖然とする三人の顔があった。
(そんな顔したくもなりますよね……)
 茜色に染まる病室で、彰寛に婚約者だと思いこまれたうえ、キスをされてしまうという衝撃的な出来事の翌日……。
 午前中に退院した彼を囲み、両家の親と美優の五人でランチの最中である。
 彰寛は会社に近い都心のマンションに一人暮らしだ。退院すればもちろんそこへ帰るのだが、仁科の父が退院したばかりなのだから少し実家にいたらいいのではないかと提案したのだ。
 しかし彰寛としては、過ごしやすく環境を整えてあるマンションのほうが生活も仕事もしやすい。大丈夫と断ったものの、父親は息子が心配で心もとない顔をしている。気を利かせた美優が「それならわたしが様子を見に行きますから」と言い、娘の機転を悟った両親が後押しをした。
 それなら……と、彰寛が冒頭のセリフを口にしたのである。
 彰寛が美優を婚約者だと思ってしまったことを、親たちは知らない。美咲の存在を思いだせていないのはわかっていたので、触れないようにしていたのだ。
 ……しかしまさか、美優を婚約相手だと思ってしまうとは……予想だにしていなかっただろう……。
「入院中付き添ってくれた美優の献身的な姿を見ていて、もう離れたくないと思ってしまったのが本当のところです。婚約しているとはいえ、まだ結婚したわけではないのだから今から一緒になんてと、言われてしまいそうではありますが……」
 今日ほど、レストランの円卓テーブルに戸惑ったことがあっただろうか。
 座ったときはそれほど意識していなかったのに、こうしていると二人で並んでいる向かい側に両家の親がいるように感じてしまう。
 そんな親たちを前に、彰寛は言い切る。
「美優がそばにいてくれたら、もう過労で倒れるなんて無茶はしないと思う。もしかしたら、まだ記憶障害で大切なことが抜けているかもしれないと不安はあっても、美優がいてくれれば、それも乗り越えていける気がする」
 おだやかに、しかし力強く、彰寛はその気持ちを口にする。それだから反対しないでくれと、親たちに訴えかけているかのようだ。
 実に堂々とした頼りがいのある姿。こんなにも強く彼に求められたら、感動のあまり呼吸もままならなくなるだろう。
 現に、今の美優がそうである。
 ただし……。彼女の場合、感動のあまり……ではなく、焦燥するあまり……なのだが……。
(あああああ〜、どうしよぉ〜、こんな勘違いをしてるなんて、お父さんもお母さんも、おじさんもびっくりしちゃう)
 本物の婚約者が失踪中だなんて、もちろん親たちだって言いづらい。
 しかし、婚約したことを思いだしていて、その相手が美優なんだと勘違いしている限り、親たちは真実を告げようとするだろう。
 仁科の父にしてみれば、息子の勘違いで美優に気持ちの負担を強いることになると考えるだろうし、美優の両親は美咲の失踪を黙っているわけにはいかないと考えるに違いない。
 美咲への恋心を思いだせば彰寛が傷つくと考えたが、まだ思いだしていないうちならばそれほど重い傷にはならないかもしれない。
 そう考えれば、今、親たちから真実を告げられたほうが……。
「それはいいな」
 そう、そのほうがいい……。
(はい?)
 彰寛を想って苦しくなっていた呼吸が、予想外の空気にその重さを払われる。うつむき気味だった顔を上げた美優の目に映ったのは、微笑みを湛える親たちの顔だった。
「いいじゃないか。美優ちゃんは入院したときから彰寛を支えてくれていた。彰寛がそこまで言い切るなら、二人で相談した結果なんだろう。私もそのほうが安心だ。なぁ、谷瀬」
 爽やかに言い放つ仁科の父は、隣に座る美優の父に話をふる。ここは誤解を受けている娘のためにも真実を……、という希望は、父のちょっと寂しそうな笑みの前に打ち砕かれた。
「彰寛君がそこまで言ってくれるなら、私も反対はしない。美優もそのほうがいいのだろうし……。なぁ?」
 父は美優にではなく、隣にいる母に同意を求める。父とは正反対に晴れやかな顔をしている母はトーンを上げた。
「ええ、もちろん。そんなに彰寛さんに頼られているなんて、美優はすごいね。二人で決めたのなら大賛成よ。ねえ、美優」
 まるで伝言ゲームをしているかのように、話は美優にふられる。当の美優は唖然とするあまり声も出ない。
 この、理解ありすぎる言葉の数々は、なんだろう……。
 三人とも、彰寛の勘違いをすっかり肯定してしまっている。
 ――誰も美咲の話を持ち出そうとはしない。
(どうして……。姉さんの存在を知らせないままでいいの……?)
 美優だって真実を言いだせない一人だ。美咲への想いをよみがえらせたときの彼がどれだけショックを受けるかを考えれば、言葉が喉まで上がってこない。
 親たちも同じだろうか。婚約者が秘密にしていた恋人と失踪したなんて知らされたら彰寛が傷つくと考えて……。それだから、今は勘違いしたままでいいと。
 言葉を出せない美優を飛ばし、彰寛が口を開く。
「実は、一緒に住むことを美優には相談していないんですよ。これは、俺が独断でご相談をさせていただいているだけで……。けれど、俺はいっときも美優と離れたくない。美優もそう思ってくれているだろうと信じてはいますが、ご存じのとおり美優は真面目で消極的なところがある。絶対に『結婚もしていないのに』と迷うだろう。嫁入り前の娘なのにと、おじさんとおばさんの気持ちも考えていい返事はくれないだろうと考えてしまったんです。それで、父さんや美優のご両親の意見を先に聞きたくて、この場でご提案をさせていただきました」
 堂々と言いきったあとに、彼はふっと表情をゆるめる。
「……ちょっと、ズルかったですね……」
 照れくさそうなその顔に、きゅんっとしていいやらうろたえたほうがいいやら。すると、テーブルの上に出ていた美優の手に、彰寛の片手が重なった。
「ごめん、美優」
「……えっ! ぃぇ……あ……」
「美優に、イヤだ、って言われたくなかったんだ」
「い、いえ……そんなこと言わな……」
 こんな顔をされたら、どうしたらいいかわからないし、上手く言葉も出ない。
「父さんや、おじさんおばさんの前で言って了解をもらえれば、美優も安心してうなずいてくれるだろう、って……。頼む、いやだって言わないでくれ」
「いっ……」
 ――いやだ、なんて……言えるはずがない……。
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