離縁されました。再婚しました。2
仮面陛下の愛妻
【本体1200円+税】

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●著:東 万里央
●イラスト:すずくらはる
●発売元:三交社
●発行元:メディアソフト
●ISBN:978-4-8155-4070-8
●発売日:2021/11/30

初めてのお忍び旅行は波乱と溺愛がいっぱい⁉

王妃になって3年、相変わらず国王ロランとラブラブな生活を送るクロエは、ある日過労で倒れて遠方の街で静養することに。そこでロランと同じ赤い瞳を持つ寡黙な自警団の団長・ジャンに出会うが、なぜか彼に興味を持たれてしまう。そんな中、街を騒がす連続放火事件で人助けをしたことから、クロエは『聖女』と担ぎ上げられてしまい!?
大人気WEB発小説・ますますイチャイチャな第2巻!




「──風邪ですな」
 診察に訪れた宮廷医が小さく頷き、聴診器をカバンにしまう。
「恐らく、疲れもあるのでしょう。王妃様は近頃公務も私生活もお忙しいようでしたから」
 ベッド周辺を彷徨っていた男は、「……治るんだな?」と、いささか血走った目で宮廷医の肩をがっしと掴んだ。
「ええ、もちろん治りますとも。陛下が無理をさせなければの話ですが」
「くっ……」
「無理をさせなければ」の意味は十分理解しているのだろう。宮廷医の口調が冷静なだけに一層胸を抉られるらしかった。
 陛下と呼ばれた男盛りの美貌の男は、フロリン王国・国王ロランである。
 そして、クロエは彼の妻であり、フロリン王国の王妃だ。
 この国王夫妻はフロリン王国どころか、大陸でも前代未聞のオシドリ夫婦として有名だった。政略結婚が主で関係が冷めがちな王侯貴族には珍しく、この二人は結婚四年目の今も臣下が呆れるほどラブラブで、ヒマさえあればイチャついている。
 それでも普段は公務に支障がないように節度をもってイチャついているのだが、先週、二人の共通の友人である辺境伯令嬢マルグリット・ヴァールが、二十三歳にしてようやく従兄のセルジュと結婚した。その挙式、および披露宴に招待されたクロエたちは、幸福そうな二人を目にしたことで自分たちの新婚時代を思い出し、王宮に帰宅するが早いか、挙式時のヴェールを引っ張り出して夜から翌日の昼まで睦みあってしまい──結果、クロエは風邪をひいてしまったらしい。
「ロラン様……ご迷惑をおかけして申し訳ございません」
 瞳を潤ませ息苦しそうに話すクロエの手をロランがそっと取る。
「いや、君のせいじゃないクロエ。私が馬車の中で『そういえば私たちのヴェールがまだ残っていたな』などと言い出さなければ」
 仲睦まじい夫婦の会話に宮廷医は苦笑しつつ、説明を続けた。
「ヴァール周辺は王都より涼しいですし、湿度も低いので旅人や行商人もたびたびかかる症状です」
「クロエはどうすれば早く治るだろうな?」
「薬は処方しましたし、ゆっくり静養していれば治るでしょう。公務は控えた方がよろしいですね。疲労とストレスは体力を落とす原因になります」
 ロランは顎に手を当て低く唸った。
「公務は調整すればなんとかなるだろうが、王宮にいる限りは忙しさからは解放されないだろうな」
「と申しますと?」
「子どもたちがいるからだ」
 直後に、事前に叩かれることもなく扉が開かれ、三人の幼児が飛び込んできた。
「「「お母様あ!」」」
 一人はロランそっくりの青銀の髪で深紅の瞳の男の子、もう一人はクロエそっくりの茶の髪に茶の瞳の女の子だ。女の子に手を引かれている一回り小さな三人目の子どもは、髪と瞳こそクロエと同じ色だったが、顔立ちはロランによく似ている。
 三人はクロエのベッドにわらわらと駆け寄った。
「お見舞いに来たよ!」
「どんな病気なの?」
「おかあちゃま、だいじょうぶ?」
 クロエは一瞬だるさも忘れて体を起こした。
「まあ、アーベル、エステル、レオン、三人ともいけないわ。風邪がうつっちゃう」
 この三人は夫妻の間に生まれた第一王子アーベル、第一王女エステル、第二王子レオンだ。クロエは若く見えるが二十二歳であるだけではなく、すでに三児の母だった。
「だって……心配だったんだもの」
 エステルが蚊の鳴くような声になる。
「乳母も侍女も行っちゃいけませんって言うばかりで……」
「まあ、そうだったの。心配かけてごめんなさいね。あなたたちも大きくなったんだもの。ちゃんと説明してほしかったわよね」
 クロエはエステルの頭を優しく撫でたが、風邪をうつさないためだろう。いつものように頬にキスはしなかった。
 ロランは長男のアーベルをひょいと抱き上げ、「お母様は風邪を引いたんだ」と言い聞かせた。
「ゆっくり休めば治るそうだ。しばらく会えなくなってしまうが、アーベル、お前は我慢できるかい?」
「……っ」
 ロランと同じ、アーベルの深紅の双眸が見開かれる。
 アーベルは長男であり王太子であり、双子のエステルとともにもう三歳だが、それでもまだ母親が恋しい時期である。会えないのは辛いのだろう。
 それでも、すでに王族として、男としてのプライドは芽生えているらしい。「わかった……」と頷き、ロランの目を真っ直ぐに見つめた。
「俺、お兄ちゃんだからね。我慢なんて平気だよ。エステルやレオンが寂しがったら、お母様みたいに撫でてあげるんだ」
「おっと、お父様を忘れないでくれ。お前も寂しくなったら私に甘えていいんだよ」
 二人の会話に、クロエも思わず微笑む。ロランは子どもたちを宥め、乳母を呼んで下がらせると、宮廷医を振り返り「あの通りだ」と苦笑した。
「子どもたちはクロエがほとんど自分の手で育てたからな。ああ言い聞かせはしたが、王宮にいる限りはどうしても会いたくなり、見舞いと称して会いに来るだろう。皆まだ甘えたい盛りだ」
「なるほど。それではろくに休めませんな。ご家族の仲がよろしいのは結構なことですが……」
 宮廷医はしばし首を傾げていたが、やがて「そうだ」と手を打った。
「では、王都から離れて静養していただくのはいかがでしょう?」
「静養?」
「ええ。そうですね……。トゥール辺りをお勧めします。あの辺りは気候が穏やかですし治安もいい。国内の貴族も別荘を建てていますよ」
「なるほど、トゥールか」
「難点と言えば少々遠い点でしょうか」
「いいや、距離はいいんだが……」
 ロランは顎に拳を当て何やら考え込んでいる。
 宮廷医はロランの躊躇いを愛妻から離れたくないからだと受け取ったようで、微笑ましそうに「いっそ、ご同行してはいかがですか?」と笑った。
「なるほど、お二人ほど仲睦まじいと、一時でも離れがたくなるようですからね」
「同行か……。だが、もうじき外交官の入れ替わりの時期だからな。会議が重なっている」
(ロラン様は何を迷っているのかしら?)
 クロエが首を傾げていると、寝室の扉が遠慮がちに二度叩かれた。
「失礼いたします。先ほど、ヴァール辺境伯令嬢夫妻がいらっしゃいまして、王妃様の容態をお伝えしたところ、ぜひお見舞いされたいと……」
「「へっ?」」
 ロランとクロエは揃って扉に目を向け、次いで顔を見合わせ「なんで?」と首を傾げた。
「二人は今頃もう新婚旅行じゃ……」
 次の瞬間、扉が勢いよく開け放たれ、月光の女神を思わせる絶世の美女が現れた。
 腰まで流れ落ちる天の川のようなくせのない銀髪と、極上の宝石を磨いて嵌め込んだのかと目を疑う、色鮮やかなサファイアブルーの瞳。同色のドレスも一層美しさを引き立てており、何も知らない男であれば、その場に跪き足にキスをさせてくれと頭を垂れただろう。ただし、中身を知らなければの話だが。
「クロエちゃん、風邪引いたんですって!? 大丈夫!?」
 美女は──マルグリットはベッドににじり寄ると、クロエの手を取ってしかと握り締め、「こんなに痩せ細っちゃって」と睫毛を伏せた。
「い、いえ、それほど体重は落ちていないんですけど。あの、新婚旅行は……」
 いつの間にやらマルグリットの背後に佇んでいた青年、マルグリットの夫となったばかりのセルジュが、「それが……」と困ったように頭を掻く。
「目的地がちょっとヤバいことになってしまいまして」
 マルグリットの暮らすヴァールは内陸にあり、それもあって新婚旅行はまだ一度も見たことのない、海を目の前にした港町に決めたと聞いていた。
「ところが、近頃あの辺で疫病が流行り出したって聞いて、直前で引き返してきたんです」
 ついでだからと二人は王都にも立ち寄り、結婚祝いの礼も兼ねて王宮を訪ねたところ、クロエが寝込んでいると聞いて飛んできたのだとか。
 ロランがはっとしてマルグリットに目を向けた。
「なんだと、疫病?」
 マルグリットは「そうなのよお」と肩をすくめた。
「行商人から聞いたの。多分、貿易船の船員が持ち込んだんじゃないかなって。まだ王都に報告が入ってないってことは、発生したばかりみたいね」
「あの辺りはそうした点については警戒していたんだがな……。マルグリット殿、ありがとう。すぐに対策を取らなければ」
 王都はフロリンでもっともヒトとモノの流出入が多いので、一人でも疫病に掛かった人物が入り込めば、一気に蔓延する可能性があるからだと説明した。
「となるとクロエ、君はやはり王都から離れていた方がいいだろうな。子どもたちも離宮へ移した方がいいかもしれない」
 マルグリットは話が見えないのか、「えっ、何何?」と目を白黒させている。更にロランに「すぐにヴァールに戻るのか?」と問われ、「いいえ。旅行なんて滅多にできないしね」と首を振った。
「セルジュと相談してトゥールにしようってことになったの。あそこも観光地としては有名だから。ヴァールからもそこまで遠くないしね」
「……!」
 ロランと宮廷医が顔を見合わせる。
「クロエ、君はどうだろう? トゥールで静養したいかい?」
 突然話を振られクロエは戸惑ったが、ゆっくりと休むためというよりは、一度も行ったことのない土地への憧れで頷いた。
「は、はい。観光地というところも楽しそうですし……」
 ロランは小さく頷くと、今度はくるりと振り返り、満面の笑みを浮かべてセルジュの肩に手を置いた。
「というわけでセルジュ殿、クロエのトゥールへの送り迎えをよろしくお願いします。あなたがたが同じ街にいるなら百人力だ」
「え、ええっ!? でも、俺たちは新婚旅行で……」
 セルジュの必死の訴えは他ならぬ新妻のマルグリットによって遮られた。
「あら、いいじゃない。クロエちゃん、私たちの馬車に乗って行きなさいよ。どうせだから同じところに泊まっちゃう?」
「マルグリット〜! 新婚旅行くらいは二人きりがいい! 馬車の中でイチャイチャするのが夢だったのに!」
「ま、マルグリット様……」
 さすがに、この先尻に敷かれるであろう彼の人生を考えると、涙に濡れるセルジュの一生に一度の希望を無碍にはできない──クロエはおずおずとマルグリットに申し出た。
「あ、あの、馬車は別々でいいです。こちらがお二人の後を追う形にできれば……」
「もう、遠慮しなくていいのに」
 マルグリットは美しい頬を膨らませるが、もちろん、クロエとしてはトゥールの宿泊先も別にするつもりだ。新婚夫婦の甘い夜を邪魔するつもりはない。仲良くしてもらえるのはありがたかったが、セルジュの恨みは買いたくなかった。
 ロランがううむと腕を組んで唸る。
「となると、クロエにも護衛だけではない。侍女と従者も必要だな……従者か……」


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