お見合い相手のイケメン国王陛下に溺愛されてます
転生王女がヒロイン不在のフラグを回収する魔法
【本体1200円+税】

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●著:白柳いちか
●イラスト:ゴゴちゃん
●発売元:三交社
●発行元:メディアソフト
●ISBN:978-4-8155-4082-1
●発売日:2022/3/30

感じているそなたも可愛らしいな

魔術国家の王女オフィーリアは、縁談相手のイエラ国王アルマンドの肖像を見て驚く。彼は前世で愛読していた小説のヒーローで、彼を手助けする筈のヒロインはオフィーリアが居たことで別の運命を辿り、既婚者となっていたのだ。責任を感じたオフィーリアはイエラに嫁ぐことを決心する。「今宵もわたしを癒してくれるのだろう?」政略結婚でも惹かれ合い愛し合う二人だが、貴族の一部が叛乱を企て!?




「わたくしは……陛下の婚約者になれて、幸せですわね」
「……幸せ?」
「えぇ、これほど優しく大事にしてくださって、こうして気遣ってくださる。こんなにも素敵な婚約者は、なかなかおりませんわ」
「……治療させられてもか?」
 アルマンドが、僅かに肩眉を上げる。
「もちろんです。逆に、魔素の多さを見込まれて、相手に魔素を供給するための婚姻もあちらには存在しますもの。珍しいことではありません」
「……」
 それでも納得がいかない様子のアルマンドに、オフィーリアは、少し考える素振りを見せてから、にこりと彼に微笑みかけた。
「それに……こうして手を繋いで葡萄酒をいただきながら夜空を見上げるだなんて……まるで恋人同士の語らいみたいではありませんか」
「……まぁ、婚約者だからな」
 気のない返事をするアルマンドに、オフィーリアは、苦笑を漏らす。
「……陛下は、どうですか?」
「ん?」
 アルマンドの顔を覗き込むように問いかければ、注意を引かれたのか彼の瞳がこちらを向く。少しだけ拗ねているような表情に、なんだか気持ちがほっこりする。
「わたくしが婚約者となって、残念に思ったりはしていませんか?」
 本来であれば、もっと可愛らしい主人公が、婚約者として彼の元に来るはずだったのだ。それが何の因果か、こうしてオフィーリアが彼女になり替わっている。
 アルマンドほどの美丈夫であれば、もっと選り取り見取りであるはずだ。
 オフィーリアは、髪も瞳も真っ黒で、特別美しい容姿をしているわけではない。言うなれば、平凡。前世の記憶がある分、特別感は何もない。少しくらい代わり映えがしてもいいのにと思わなくもないくらいだ。
 紹介された婚約者が彼女で、アルマンドこそ、がっかりしたのではないだろうか。
「……ない」
「え?」
 アルマンドの言葉が聞き取れなくて、何と言ったのかと聞き返せば、少しの無言の後に言葉が返ってくる。
「……残念になど、思っていない。そなたが……婚約者であって……良かったと思っている」
 オフィーリアは、アルマンドの言葉に目を見開いた。そのまま彼を見上げれば、酷く真面目な表情で、こちらを見下ろしていた。
「夜空のような漆黒の髪も、星空のような瞳も、そして雪原のような真っ白い肌も……神秘的で美しいと、そなたを初めて見た時に感じた。そなたを我が妻にと紹介してくれた老師に、心から感謝したほどだ」
 顔から火を噴きそうなほど恥ずかしい誉め言葉に、オフィーリアは動揺するしかない。この手の誉め言葉には、残念ながら慣れていないのだ。
「そなたは、どうだ? こんな身分だけしか取り柄のない、『魔素』も扱えない手のかかる男が夫候補では、がっかりしたのではないか?」
 アルマンドの問いかけに、とんでもないと、オフィーリアは全力で頭を振った。
「そんなことありませんっ! 陛下は、とても素敵ですもの! 太陽にきらきら輝くその黄金色の髪も、新緑のように美しい瞳も……」
「……まぁ、あちらの国では珍しい色ではあるだろうからな」
「ちが……ッ」
 そうではないと言いたくても、ずっとアルマンドを知っていたとは口にできなくて、オフィーリアは言葉を詰まらせた。
「まぁ、不快に思っていないのであれば、何よりだ。女性を不快にさせる容姿はしていないと自分では思っているが……こればかりは個人の主観でしかないからな」
「そんな……っ、そんなことありません! いつも素敵だと思っておりますッ。手を繋ぐのだって……最初はドキドキして……あ」
「……ッ」
 勢いづいたあまり、余計なことまで言いかけて、オフィーリアは慌てて口を閉じるものの、それは後の祭り。しっかりと耳に届いたであろうアルマンドは、僅かに目元を染めて息を飲む。
「……すみません。余計なことを……」
 真っ赤になりながら、顔伏せて謝罪の言葉を紡ぐ。穴が合ったら入りたいとは、正にこのことであろう。
「いや……ドキドキしてもらえたのであれば……よかった」
 お互いに恥ずかしくなってそわそわと視線を彷徨わせる。そんな空気の中、先に口火を切ったのは、アルマンドであった。
「……オフィーリアと、名を呼んでも?」
「……はい」
 名前を呼ばれるのは、少しだけ距離が近くなった証。そのことに気が付いて、オフィーリアは、頬を緩めて頷いた。
「オフィーリア……」
「……はい」
「……改めて呼ぶと、何だか照れるな」
「……ッ」
 あえてそう口にされては、さらに恥ずかしくなる。顔を更に染めたオフィーリアに、アルマンドが小さく笑った。
「オフィーリア、そなたもどうかアルマンドと」
「……ッ、……アルマンド……様」
「……ッ、あぁ」
「……」
「……」
 やはりお互いに恥ずかしくなって、ふっとそっぽを向く。何だかものすごく、こそばゆい気分である。そわそわと視線を彷徨わせていると、耳元で名を呼ばれる。
「……オフィーリア」
 アルマンドが、オフィーリアの手から葡萄酒のグラスをそっと引き抜いた。二人の視線が真っすぐに絡み合う。ゆっくりと迫りくる顔に、経験がなくともこの次の展開は予想ができる。自然とオフィーリアが瞼を閉じれば、彼女の唇に柔らかなものがそっと押し当てられた。
 ふわりと二人を取り囲むように、魔素を含んだ風が起こる。キラキラとした魔素の残滓が辺りを照らした。

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