クールな御曹司は妻子を溺愛するパパになる
誤解から始まる新婚ライフ♡
【本体1200円+税】

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●著:水島忍
●イラスト:敷城こなつ
●発売元:三交社
●発行元:メディアソフト
●ISBN:978-4-8155-4083-8
●発売日:2022/4/28

一緒に暮らそう。君と出会えて、本当によかった

祖父母の家で娘の音葉と共に暮らす未婚の母の花音は、祖父が結婚相手にと連れてきた男性が、音葉の父親、恭司であることに驚く。二人はかつて恋人同士だったが、恭司は花音に何も告げず、突然連絡を断ったのだ。頑なになる花音に強引に迫り、結婚を決める恭司。「僕には君だけだ。君しかいないんだ」三人で生活するうちに徐々に打ち解けてくる二人だが、花音は過去のことがひっかかっていて!?




「でも、わたし達、普通の夫婦とは違うし……。何もかもあなたに頼るのは違うような……」
「馬鹿な。入籍して、同居しているなら普通の夫婦だ。夫として妻と幼い子供を養うのは当たり前のことだよ。頼むから、もっと僕を頼ってほしい」
 彼は立ち上がり、改めて花音の横に座った。そして、花音の顔を覗き込むように見つめてくる。
 彼の顔が間近にある。花音は彼の体温まで感じるような気がして、鼓動が速くなってきた。顔が火照ってきて、どうしたらいいか判らなくなる。
「た、頼っているわ……。いろんなことを相談したり……」
「ほとんど音葉のことだ。君は僕にそんなに頼りたくないのか?」
 彼はそんなにわたしに頼ってほしいの?
 花音は恭司の本当の気持ちが知りたくて、その顔を見つめた。こちらを見つめる瞳が何故だか花音の身体を熱くさせてしまう。
 だから、ダメなのだ。彼に近づくと、いつもこんな反応をしてしまうから。
 けれども、目が離せない。
 キスがしたい……。
 突然、花音の頭にそんな考えが閃いた。
 そんなことを考えてはいけないと思うのに、考えまいとすればするほど、そのことばかり考えてしまう。彼の息遣いが気になって、どうしようもない。
「頼っても……いいの?」
 花音の声は掠れていた。
「もちろんだ。僕達は……夫婦なんだ」
 彼の声もなんだか変になっている。
「わたし……」
「花音……」
 気がつけば、花音は彼の腕に肩を抱かれていた。
 彼の温もりが直に伝わってくる。その瞬間、めくるめく情熱が一気に身体の内部から噴き出してきたような気がした。
 唇が重なっている。しかし、花音は抗う素振りもしなかった。
 だって……キスしたかったから。
 唇を貪り合い、舌が絡み合う。
 本当はずっとこうしたかった。結婚生活が始まったときからずっと、彼にキスされることを望んでいた。ここへ連れてこられたあの日にキスされたときのように……。
 彼に抱かれたのはただの一度だけ。
 あの日のことも頭に浮かんだ。あのときはただ幸せだった。痛みより快感より、ただ彼に抱かれることが幸せだった。
 今は……判らない。
 でも、身体が彼を望んでいる。欲しがっている。
 もう一度、彼の温もりを肌で感じたかった。
 いつしか、花音はソファの上で彼に組み敷かれていた。激しくキスをされる度に応えていて、自分が自分ではないみたいだった。
 彼の身体にしがみつき、自分の身体を擦りつけるように動いた。
 それはもう本能的なものだったのかもしれない。花音は初めてのときのあの経験しか知らないのだから、自分の欲求をどう表現していいか判らなかったのだ。
「僕の……ベッドへ行く?」
 彼に尋ねられて、花音は小さく頷いた。
 花音は彼に抱き上げられた。音葉と違い、それなりに体重のある自分をこんなに軽々と抱き上げられる彼を、とてもたくましく感じた。
 彼の寝室には、掃除のとき以外に入ったことはなかった。ベッドにそっと下ろされて、またもや初めてのときを思い出す。
 ううん。もうあのときのことを思い出すのはやめよう。
 正確に言うと、あのマンションのことは思い出したくない。最後に訪れたときに惨めな想いをしたからだ。
 今、このときだけ。
 このときのことだけを感じたい。
 彼のすべてを感じていたい。
 彼は花音のパジャマを脱がせて、下着姿にした。ブラとショーツだけで、心もとない姿だ。ベッドサイドにあるほの暗い照明しかついていないのに、少し恥ずかしい。
 恭司は自分のパジャマを脱ぎ捨てて、ボクサーショーツだけの姿になる。彼は以前と変わらず、引き締まった身体つきをしていた。
 彼は花音を見て、クスッと笑った。
「隠さなくてもいいのに」
 花音は腕で自分の身体を隠そうとしていた。
 まったく無駄な努力だし、これから裸になるというのに、下着姿で恥ずかしいなんて今更だろう。
「でも……前より太ったし」
「音葉を産んだからだろう? そんなことは判っているよ。だいたい、君の身体は充分、細いと思うよ」
 そうだろうか。ウエストや太腿、それからバストも確実に太くなっていると思うのだが。
「それに……そんなことはどうでもいいんだ。花音は……花音だから」
 彼がそう囁きながら優しくキスをしてきた。その途端、花音の頭の中から恥ずかしさが消えていった。
 そうだ。そんなことはどうでもいい。
 花音は彼の温もりを素肌で感じ取っていた。彼の力強さや優しさも感じながら、キスを続ける。
 震えるほどに、彼が欲しくなってくる。
 もっともっと強く抱き締めてもらいたい。もっともっとキスをしてほしい。
 今の花音は自分を止められなかった。行き着くところまで行かなければ、きっと満足できないだろう。今まで自分を止められなかった経験はないが、なんとなく判る。
 やがて彼が顔を上げる。頬を両手で包んで、今度は穏やかなキスをする。そして、花音のブラの紐に手をかけ、ゆっくりと下ろしていった。

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