妹に騙され偽の花嫁になった公爵令嬢の溺愛トラブルだらけの24時間後
【本体1200円+税】

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●著:千石かのん
●イラスト:なおやみか
●発売元:三交社
●発行元:メディアソフト
●ISBN:978-4-8155-4085-2
●発売日:2022/5/30

どうしても君が欲しい

魔法をかけられて妹の姿になり、身代わりに政略結婚させられたヴァイオレット。婚姻相手で暁公爵と呼ばれるシリウスは、実は彼女の初恋の人だった。「どうしても君が欲しい……今すぐ、ここで」シリウスはなぜか最初から魔法に惑わされず、ヴァイオレットの本質を見抜き優しく愛してくる。だが可憐な姿の妹にコンプレックスがあったヴァイオレットは、なかなかシリウスの言葉を信じられず―!?




 何故彼女はタリアの姿でここにいたのだろうか。
 姿変えの魔法が使われているのはわかるが、どうしてこんな真似をしているのだろう。
 考えられるのは結婚を嫌がったタリアの身代わりにされている、というものだが、シリウスはそれをどうしても信じたくなかった。
 できればヴァイオレット自身が望んで、それこそタリアを押しのけて自らの元に来たのだと思いたい。
「君はどうして、タリアの振りをしているんだ?」
 自らの希望を確認するよう、ヴァイオレットから「あなたと結婚したかったから」のような現状を肯定する台詞が出てこないかと訊いてみる。
 だが、ヴァイオレットは何かを訴えるように口を開き、数度口をぱくぱくさせた後、諦めたように首を振った。
 目を伏せ、視線を逸らし、赤く艶やかな唇を噛んで震わせるヴァイオレットはとても……扇情的だ。
 その細い首筋に、シリウスはそっと唇を押し当てるとちゅっと音を立てて吸い上げる。
「タリアの振りをしてまで、わたしと結婚したかった?」
 そのまま、耳朶に唇を押し当てて囁くと、ヴァイオレットの身体がびくりと震えた。
 その反応が可愛くて、シリウスは何度も耳殻やその周辺にキスや甘噛みを繰り返した。
「違うの? ならどうして……ここにいる?」
 ゆっくりと舌で耳の後ろをなぞると、かすれた吐息が彼女の唇から漏れた。
 甘い疼きから逃れるように首を振り、ヴァイオレットは身体を捻ってシリウスの胸を押す。そのささやかな抵抗を無視し、彼は耳朶にキスを繰り返しながらそっと彼女をシーツの上に押し倒した。
 額を押し当て、鼻の頭を触れ合わせる。彼女の赤みが混じる菫色の瞳がうろうろと周囲を彷徨い、諦めたようにシリウスと目を合わせた。
「わたしを求めてきたんじゃないのかな?」
 期待から声が震えるのを堪えて、吐息が触れそうな位置で囁けば、こちらを見上げる菫色の瞳が揺れた。
 様々な感情が、その瞳の中を過り、ヴァイオレットの唇が震える。
 恐らくは一分にも満たない見詰め合いだったろうが、シリウスには一時間にも二時間にも感じられた。
 その長い長い一瞬の後に、ヴァイオレットが微かに頷いた。
 あなたを求めてきましたと、そう肯定するように。
 その瞬間、必死に保っていたシリウスの理性が崩れ落ちた。
 彼女しかいないと、体中の奥から訴える声が湧き上がる。
 自分には彼女しかいない。ヴァイオレットしかいない。
 この、腕の中で震えて見上げるこの女しか欲しくない。
 気付いた時には、焼けつくように熱いキスを彼女の唇に落としていた。


 シリウスを求めてきた。
(そう言われて否定できるわけがない……)
 この先に何があるのか、どんな騒動があるのか、彼女には想像もつかなかった。
 今だってどうしていいかわからないのだ。
 でもシリウスが示してくれたものがあった。
 君はタリアじゃないと、そう断言し、更には「自分を求めてきたのか」と聞いてくれた。
 言ってほしかった言葉を、憧れ続けた男性から貰えた。
 確かに外見はタリアだろう。鏡で確認ができないが、声が出ないことからまだ二十四時間経っていないと推察される。
 タリアの外見を模した、誰か。その誰かがシリウスを求める一心で、花嫁を出し抜いてここにいる。そしてそれにシリウスは激怒した様子はなく寧ろ、求めるかのような眼差しで見詰めているのだ。
(これは絶対正しくない……けど……)
 正しい花嫁は自分ではない。いつかは去らなくてはいけない。
 でも、でも、でも。
 気付けばヴァイオレットは微かに頷いていた。
 顎に触れる手が優しく彼女を促し、顔を向けた瞬間焼けつくように熱いキスが降ってきた。
「っ」
 繰り返しキスをされ、声にならない音が喉から漏れる。
 熱に浮かされて身体が震え、喉元にもどかしさが競りあがってくる。それを感じたのか、シリウスがそっと彼女の顎を撫でて促し、恐る恐るヴァイオレットが唇を開いた。
 途端、今まで接したことのなかった感触が口の中に押し入ってきて、ヴァイオレットは驚いた。思わず身じろぎするが、回った腕にしっかりと抱きしめられて力を抜くしかできなかった。
 熱く、でも柔らかいような硬いようなものが、ヴァイオレットの口の中を攫っていく。
 ゆっくりと舌先を絡めとられ、かと思ったら上顎を撫でられて、熱く重いものが身体の奥底からひたひたと満ちてくる。
 自分の口の中を犯すものが、彼の舌だと気付いた時には、ヴァイオレットはそれを追いかけ、満ちていく熱に身体が溺れていくような感覚に陥っていた。
 いつの間にかシリウスの身体に腕を回して抱き着き、やや硬い彼の髪に指先を絡めていた。
 耳の辺りをくすぐるようにすると、ふっと軽い吐息を漏らしたシリウスが、ゆっくりと顔を離す。
 ヴァイオレットの濡れた唇が、熱源を失って震える。
 そんな彼女の様子をじっくりと見下ろしながら、彼はヴァイオレットの頬にそっとキスをし、少し身を起こして自らの首元のネクタイを解いて引き抜いた。
 顔や首筋、デコルテにキスの雨を受けながら、ヴァイオレットはウエストコート、シャツと服を脱いでいくシリウスから目を離せなかった。
 今まで自分に声をかけてきた輩とは全く違う。
 彼は誰もが求める花婿で、令嬢達の憧れの的で、そしてタリアと並ぶと有名な絵画のようにしっくりくる相手だった。
 それが自分の目の前で服を脱ぎ、キスをして、更にはヴァイオレットの薄い夜着を脱がせようとしているなんて……。
 その瞬間、ヴァイオレットは我に返った。
 ピンクや赤の糸で立体的な花が刺繍がされた肩ひもが外され、薄い布が肌を滑り落ちる。
 丸い双丘が現れて、シリウスの目に留まった。
 思わず隠そうと両手を動かすが、それは素早く手首を掴んだシリウスによって遮られてしまう。
 彼の眼に、どんな色が過るのか。怖くて確認できなかったヴァイオレットはさっと顔を背けた。
 ぎゅっと目を閉じる。
 だが、聞こえてきたのは感嘆にも似た溜息だった。
「綺麗だよ……」
 甘い声が囁き、耳元に唇が触れる。
 ぎゅっと固く握りしめられていた彼女の拳を開くよう、シリウスが手首を掴む手を緩めて、柔らかく優しく手首の内側を撫でた。彼の乾いて熱い掌が包み込むように彼女の拳を覆う。
「大丈夫」
 その掌が、ヴァイオレットの腕の内側を辿り、指先がゆっくりとあらわになった胸の、その肌を揶揄うように撫でた。
 びくりと彼女の身体が跳ねる。
 その反応に気を良くしたのか、シリウスがそうっと五本の指を彼女の柔らかな果実に押し込んだ。
 ゆっくりと、重さと感触を堪能するように指先を動かされ、ヴァイオレットの呼吸が甘く震える。

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