異世界転生したら、
推しの女嫌いなハズの王子様がグイグイ迫ってきます!
【本体1300円+税】

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●著:すずね凜
●イラスト: ウエハラ蜂
●発売元:三交社
●発行元:メディアソフト
●ISBN:978-4-8155-4304-4
●発売日:2022/12/28

愛している。あなたこそが、私の運命だ。

公爵令嬢ディアーヌは王子リュシアンとの婚約直前に、この世界を描いた小説を愛読していた前世を思い出す。このままでは自分もリュシアンも悲劇となる設定に気付き、それを避けるべく婚約破棄を申し出た彼女に、リュシアンは興味を持ち熱く迫ってくる。「可愛いな、可愛い、私のディアーヌ」大好きな彼に蕩けるように愛され流される日々。ディアーヌは前世の知識で悲劇を回避しようとするが!?




 リュシアンはひとしきり声を出さずに笑っていたが、ふいに生真面目な表情になった。
「気に入った」
「え?」
「あなたが気に入った」
「ええっ?」
「この婚約を進めよう」
「え、いえ、待って……」
「あなたの予知夢とやらなら、私はまったく気にしない」
「い、いえ、気にしてくださいっ」
「年頃の乙女は感受性が豊かと聞く。悪い夢の一つや二つ、当たり前に見るものだろう」
「そ、そうじゃないんです」
 アタフタしてさらに言いつのろうとすると、すっとリュシアンの長い骨太の指先が、唇を抑えた。指の温もりに、心臓がドキンと跳ね上がった。
「もう、何も言うな」
「……」
 つつーっと彼の指先がディアーヌの唇を辿る。指先がゆっくりと下に滑り、ディアーヌの小さな顎をくいっと持ち上げた。
「っ」
 ゆっくりとリュシアンの顔が寄せられる。視界が彼の顔で占められる。
 ドキドキがどんどん高まって、ディアーヌは息をするのも忘れそうになる。
 唇が重なった。
 口づけされた、と遅ればせながらに気がつく。
 その柔らかく悩ましい感触に、頭がクラクラして思わず目をぎゅっと瞑ってしまう。
 リュシアンは優しく何度も触れるだけの口づけを繰り返した。
 前世から恋い焦がれてきた人に口づけされている。
 ディアーヌの心臓は破れそうなほどバクバク言っていた。
 あまりの幸せに、この場で死んでしまってもいいとすら思った。
 いつの間にか、リュシアンの片手が背中に回され、そっと彼の方に引き寄せられる。胸と胸が合わさり、身体がぴったりと密着した。
 自分の動悸なのかリュシアンの動悸なのかわからないくらい、鼓動が全身に響いて来る。口づけのあまりの心地よさに、頭の中が酩酊して何も考えられない。
「は……ぁ」
 ずっと息を止めていたので、苦しくなって思わずかすかに唇を開いた。
 すると、なにか濡れた熱いものがするりと口腔内に忍び込んできた。
「んんっ?」
 リュシアンの舌がぬるぬるとディアーヌの口の中をまさぐった。
 こんな口づけがあるなんて、生まれて初めて知った。
 驚いて全身が硬直してしまう。
 その間にも、リュシアンの舌は歯列、唇の裏、口蓋、喉の奥まで探ってくる。口を閉じたくても、リュシアンの舌を噛んでしまいそうで、ただ呆然と口を開けているだけになってしまう。
 やがて、怯えて縮こまっていた舌を探り当てられ、そこをリュシアンの舌が擦る。
「んんんー……っ」
 猥りがましい感触に、喉奥から変なうめき声が漏れた。嚥下できない唾液が、口角から溢れてくる。
 ふいに舌を搦め捕られ、ちゅうっと音を立てて強く吸い上げられた。その瞬間、背筋に経験したことのない甘い痺れが走り、ディアーヌは目を見開いた。
「ふ、ぁ、んんああっ……ぃやぁ……」
 身じろいだディアーヌの身体をリュシアンは、さらに強く抱きしめてくる。
「んぁ、は、はぁ……ぁ」
 何度も強く舌を吸い上げられると、淫らな刺激に強張っていた四肢からみるみる力が抜けていく。くちゅくちゅと舌が擦れ合う恥ずかしい水音が耳孔に響き、怖くて恥ずかしいのになぜか心地よい、と感じてしまう。
「んゃ……ぁ、は、ふあ……ぁん」
 いつの間にかうっとりと、情熱的な口づけに溺れてしまっていた。
 ディアーヌが抵抗しないと察したのか、リュシアンは顔の角度を変えては、思う存分ディアーヌの甘い舌を味わう。
「……は、はぁ、は……ぁ……」
 永遠と思われるほど長い口づけの果てに、ようやくリュシアンの唇が離れた時には、ディアーヌは半ば意識を失いぐったりと彼の腕に身を預けていた。
「ご令嬢――ディアーヌ嬢」 
 リュシアンがディアーヌの燃えるように熱くなった額や頬に口づけの雨を降らす。
 ああ今、初めて名前を呼ばれた、と、思考が散漫になった頭の隅で思う。
「で――殿下……」
 息も絶え絶えで答える。
「二人だけの時は、名前で呼んで欲しい」
 リュシアンがにこりと白い歯を見せて微笑んだ。
 目も眩むような爽やかな笑顔に、ディアーヌは心臓を射抜かれる。
 熱い口づけの直後の清涼な笑顔なんて、ずるすぎる。前世の思慕がなくても、どんどん心惹かれてしまうではないか。
「……リュシアン、様……?」
 おずおずとその名前を口にすると、リュシアンは満足げにうなずいた。
「そうだ、それでいい」
 彼はそっとディアーヌの身体を解放した。
「もう、気分は悪くないか?」
「わ、わかりません……なんだか身体が熱くて、クラクラして……」
「それは良い気分という意味かな?」
 ふふっと吐息で笑われ、恥ずかしさに余計に体温が上がってしまう。
「今日は初顔合わせだから、これで失礼する――私はまだ執務が残っているからな」
 リュシアンは名残惜しげな顔で立ち上がると、大きな手でそっとディアーヌの頭を撫でた。
「明日、昼前に屋敷に馬車を寄越す。散歩でもした後、昼餐を共にしよう」
「はい――あ、いえ、だめです、婚約は……」
「解消せぬ」
 きっぱりと言われ、ディアーヌは気を飲まれてしまう。
「そんな心細そうな顔をしなくてもいい」
 リュシアンは力づけるような口調で言う。
「今までも、命の瀬戸際に立たされたことは何度もある。数多の戦も勝ち抜いてきた。あなたとの結婚くらいで、不幸になることなど、決してない」
「リュシアン様……」
 自信満々で言われると、そうかもしれないとつい思ってしまう。でも――。
「誰ぞおるか?」
 リュシアンが階の後ろの垂れ幕の方に声をかけると、音もなく衛兵が数名現れた。
「あ」
 王弟殿下の護衛が身を潜ませていたのを知って、ディアーヌは口づけの場面も見られていたのかと、恥ずかしさに顔が真っ赤になった。
「カルノー公爵令嬢をお屋敷まで送り届けるように」
「承知しました」
 リュシアンの命令に衛兵たちが頭を下げる。
「では、また明日だ」
 リュシアンは最後にディアーヌに軽く手を振った。
 そして、踵を返して謁見室を出て行ってしまう。
「……」
 ディアーヌはぼうっとその後ろ姿を見送っていた。
 情熱的な口づけと優しい言葉に、動悸がおさまらない。
 でも、このままでは――。
 甘くときめく胸の奥に、ひやりと冷たい予感も潜んでいることを感じていた。

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