伯爵令嬢は魔法を操るイケメン公爵に娶られ溺愛されてます 私の針仕事が旦那様のお命を救うんですか!?【本体1300円+税】

amazonで購入

●著:北山すずな
●イラスト: すがはらりゅう
●発売元:三交社
●発行元:メディアソフト
●ISBN:978-4-8155-4306-8
●発売日:2023/01/30

愛しいきみを何度でも抱きたい

伯爵令嬢なのに繕い物が大好きなミリアは、夜会で会った青年のシャツを繕ったのがきっかけで、その青年──公爵ラインハルトに気に入られ、嫁ぐことになる。幻獣のグリフォンに呪われた血筋である彼は寿命が短く、親族に結婚を急かされていたのだ。「よく耐えたね、ミリア。可愛いよ」可憐な新妻を溺愛し、昼夜可愛がるラインハルト。だがミリアは、彼の生き急ぐような姿勢に不安を感じて──!?



 ミリアは大広間まで階段あと一段というところで身動きできずにいた。
 しかし彼女が行くまでもなく、青年のほうから歩み寄ってきた。
 段差があるにも関わらず、青年と視線を合わせるには、ミリアは顔を上げないといけなかった。彼女は男の顔を懸命に見るが、やはり見覚えはない。
 青年のほうは熱っぽい眼差しでミリアの顔を見つめてきた。
 よほどの怒りでたぎっているのだろうか。
 その場に居合わせた者たち全員の注視の下、二人は見つめ合った。
 やがて青年は怒りというよりは、はにかんだような微笑みを浮かべ、コートのポケットから白い布製のマスケラを取り出して見せた。
「これに見覚えはない?」
 仮面舞踏会で身に着けるもので、絹の白地に金の糸で美しい刺繍が施されている。
「……ええ……?」
 ミリアの記憶の底から、何かが浮かんできたが、いまひとつはっきりしない。
「では、私のシャツの破れを縫った覚えは? 薔薇園に隠れていた時だ」
 彼はそう言って、自分の左肩の辺りを示した。
「…………あっ」
――縫ったわ。
 顔に見覚えがないわけだ。
 彼はあの時マスケラで顔を隠していたのだから。
 彼のシャツに薔薇のトゲが引っかかったことだけははっきりと記憶に残っている。
 それを繕わせてもらって、あんなに嬉しかったことを忘れるはずもない。
 難易度の高い繊維をかなり見事に修繕でき、喜びに満ちて眠ることができたことを。
「……思い出しました。極上の絹の縫い心地は今もはっきりと覚えています」
 そうだ、あの時、確かにミリアは獲物を逃がすまいという勢いで、あの青年の膝に乗った。
 そうしないと、彼の肩に届かなかったのだ。
「じゃあ間違いない! 私が探していたのはきみだ」
 ヘラがヒィっと喉を鳴らした。
 ミリアにもようやくわかった。
――だからお父様は、わたしに部屋から出るなとおっしゃったのね。
 そんなはしたないことをやりそうなのは我が娘しかいないと、察していたに違いない。
――でも、だからって使用人を身代わりにするのは違うわ。罰は自分で受ける。
 ミリアはしっかりと足を踏みしめて最後の一段を下り、彼とすれ違うように一歩進む。
「そのようでございますね」
 ミリアは自分を鼓舞するようにぴんと背筋を伸ばした。
 ヘラの言うとおりだ。
 淑女らしく、堂々と。
 こんな時だからこそ、取り乱さないようにしようと思った。
 動揺を隠して、つんとすまして断罪されるのを待つ。
 しかし、青年から激昂した雰囲気は感じられない。それどころか――。
「ああ、信じられない。やっと見つけた」
 青年はそう言うと、ミリアを追い越して向き直り、その足下におもむろに跪く。
 そして彼女の手を求めた。
 犯人が自分だったなら仕方ない。
 手を鞭で打たれるくらいですむなら喜んで受けよう。
 ミリアは意を決して、両手を差し出す。
 彼は一瞬驚いた顔をしたが、彼女の右手だけをとってその甲に口づけをした。
「諦めなくてよかった。また会えた」
――うーん……? なんだか変だわ。
 ミリアは狐につままれたような気持ちで、その美しい青年を見下ろした。
 彼はミリアの手を取ったまま、言った。
「……どうか私と結婚してほしい」

☆この続きは製品版でお楽しみください☆

amazonで購入

comicoコミカライズ
ガブリエラ文庫アルファ
ガブリエラブックス4周年
ガブリエラ文庫プラス4周年
【ガブリエラ文庫】読者アンケート
書店様へ
シャルルコミックスLink
スカイハイ文庫Link
ラブキッシュLink