転生悪役令嬢につき、殿下の溺愛はご遠慮したいのですがっ!? 婚約回避したいのに皇子が外堀を埋めてきます【本体1300円+税】

amazonで購入

●著:御厨翠
●イラスト: Ciel
●発売元:三交社
●発行元:メディアソフト
●ISBN:978-4815543136
●発売日:2023/04/28

きみに好かれていると自惚れてもいいか?

公爵令嬢ヴィヴィアンヌは自分が乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢であると気付くと、前世で得たゲームの知識で皇子フレデリックが重傷を負う事件から彼を助ける。
破滅の未来を避けるため皇子との婚約話は固辞する彼女だが、フレデリックは諦めず愛を囁いてくる。
「きみが愛しくてどうにかなりそうだ」
美しい皇子の溺愛についに陥落するも、本来彼と結ばれるはずの狎蚕瓩里海箸気になり!?



(さすがは陛下の生誕パーティだわ。通常とは規模がまるで違うもの)
 招待されている人数もさることながら、煌びやかな会場にまず目を奪われた。公爵家令嬢といえども、そうそう簡単に登城はしない。皇族に招待された茶会やパーティに出席しなければ、めったに立ち入ることはない特別な空間だからだ。
 そのうえ城の敷地はとても広いため、いまだ足を踏み入れたことのない場所が数多くある。ここもそのうちのひとつで、大規模な催しでなければ利用も稀な大会場である。
「緊張しているな」
「……はい、少し」
 楽団の奏でる優雅な音楽が流れる中、会場を歩きながらフレデリックが小声で話しかけてくる。同じように小声で答えながらも、笑顔を絶やさないよう努めた。
「パーティには慣れているつもりですが、殿下のパートナーとして注目をされるのは緊張しますわ」
「私がそばにいるから、そう構えることはない。陛下の挨拶のあとダンスを一曲終えたら、ロルモー公爵と話す時間を取ろう」
 そう言っている間にも、フレデリックの周囲には人が集まってくる。皆、挨拶をしようと待ち構えているのだが、彼はそれらを制して赤絨毯が敷かれている階段を上がった。
 会場を見渡せる皇族用に設えられたその場には、四席設けられている。通常は、皇帝、皇后、第一皇子の三席のみの場にもう一席が追加されている意味を、パーティの出席者は皆理解していた。
 今日、正式に、フレデリックの婚約が発表されるのだ、と。
 ヴィヴィアンヌが婚約を固辞していたことにより、ほかの貴族の娘を婚約者に、という声がなかったわけではない。ただ、フレデリックはヴィヴィアンヌ以外の婚約者を拒絶し、皇帝や皇后もそれを認めている。
 皇帝の退位までの間に結婚し、跡継ぎを儲けられれば問題なし、というのは彼らの見解で、他の貴族らは皇家の意志に従った。仮に第一皇子に不慮の出来事があったとしても、皇帝には弟もおり、その子どももいる。
 セリュリエ家の血筋が絶える心配がないうえに、何よりも『皇子が純愛を貫いている』との噂は、貴族のみならず平民にまで知れ渡っている。政略結婚の多い貴族において大変に珍しく、皇子として非の打ち所がないフレデリックは民衆からの支持も高かった。
 そういった事情から、皇子がようやく思いを遂げられるのだ、と、この場にいる者の目は好意的である。フレデリックが結婚し子を成せば、皇国挙げての祭りとなり、経済面も活性化することになるだろう。
(改めて考えると、荷が重いお役目だわ)
 フレデリックのエスコートで彼の隣に座ったヴィヴィアンヌは、いつもとは違うパーティの雰囲気に息を呑む。
 これまで見上げる立場だった皇族の席に座るのは、想像以上の重圧だ。かすかに震える手を隠して笑顔を貼り付けると、「ヴィヴィアンヌ」と隣から声がかけられる。
「心配しなくていい。私がきみの隣にいることを忘れないでくれ」
「殿下……」
「と言っても、私も大概浮かれている。気を抜くと顔に締まりがなくなると、バルテルミーにも注意されたんだ。大きな失敗をしでかしそうで心配だと」
「まあ……殿下が失敗なさるところなんて、想像できませんわ」
 容姿も性格も皇子としての資質も、すべてが完璧と称されるフレデリック。彼はどのようなときでも動揺するところを見せたことはなく、迂闊な言動で他者から眉をひそめられることも皆無だ。
 正直に伝えたところ、「そう見えているなら嬉しいよ」と彼が笑う。
「ヴィヴィアンヌも同じだろう? 完璧な淑女と言われているが、努力の上でのことだ。でも、私には緊張も不安も隠さず伝えてほしい。必ずきみを支えると約束するから」
 フレデリックの気持ちが、ヴィヴィアンヌの心を優しく溶かしていく。
 ゲームのシナリオでは、皇子と聖女の出会いの場面から始まるため、これまでの彼との思い出はヴィヴィアンヌが初めて経験したことだ。フレデリックと一緒にいる時間が増えるほどに愛しい気持ちが募っていき、そのたびに自分を戒めての繰り返しだった。
(でも、聖女が現れるまでは……殿下はわたしだけを見てくださる)
 これだけまっすぐに愛情を向けられれば、何も感じないわけがない。自身もまた彼に愛情を抱いているからこそ、誠実でありたいと想う。
「……殿下、お願いがございます」
「なんだ?」
「パーティが終わったあと……お時間をいただけないでしょうか。お話ししたいことがあるのです」
 告げたとたん、ヴィヴィアンヌの心臓が大きく鳴った。自分から彼を誘うのは初めてのことだ。
 これまでは婚約者候補の立場で、常に一線を引いて接してきた。あまり親しくなれば、いずれくる別れがつらくなり、悪女へと自分が変わってしまうのではないかと怖かった。
 だが、つかの間とはいえこれからフレデリックの正式な婚約者となる。惜しみなく愛を伝えてくれる彼に誠実であるために、ヴィヴィアンヌは覚悟を決めた。
(殿下にすべてお話ししよう。たとえ信じていただけなくても……それがわたしにできる唯一の真心の示し方だわ)
 目を伏せて黙考するヴィヴィアンヌに、フレデリックの声が届く。
「きみの頼みなら何を置いても優先しよう。それにしても、なんとも可愛らしい頼み事だ。その程度なら、遠慮せずにいつでも言っていい」
「ありがとうございます……」
 フレデリックの承諾に胸を撫で下ろしたとき、会場に流れている音楽が変化した。それと同時に、儀仗兵の声が高らかに響き渡る。
「皇帝陛下、皇后陛下、ご入場にございます!」
 両陛下、登場の報せに、フレデリックとヴィヴィアンヌが自然なしぐさで立ち上がる。
 皇帝と皇后は、会場中の視線を浴びながら華々しく入場した。楽団の音楽は皇国を讃える荘厳な旋律を奏で、両陛下をよりいっそう引き立たせている。
 ゆるりと階段を上がった皇帝と皇后は、王室特有の気品と威厳に満ちていた。フレデリックの深い青を湛えた瞳は皇帝、白金の髪は皇后譲りで、この三名が同じ場所に揃うとまさに圧巻である。
 美しさと気高さを兼ね備えた皇国を統べる支配者に、貴族らが頭を垂れる。皇帝は臣下臣民らの様子に泰然と笑みを浮かべ、第一声を発した。
「皆の者、面を上げよ。今宵は私のためにこれほど大勢の者が集ったこと、喜ばしく思うぞ」
 張りのある皇帝の声に皆が顔を上げる。これから齎されるだろう慶事の報に、集った全員が期待に満ちた表情で君主を仰いでいた。
「皇国の尊き臣民よ、余はこれからも国を繁栄させることをここに誓おう。そしてそれは、我が息子であるフレデリックの御代となろうと変わらない」
 皇帝は一度視線を息子へ向けると、ふたたび招待客に向き合った。
「ここに、フレデリック・セリュリエとヴィヴィアンヌ・ロルモー公爵令嬢の婚約がととのったことを宣言する!」
 皇帝が堂々と皆に告げた次の瞬間、歓喜の声が会場内に広がっていく。「これはめでたい」「とうとうこの日が来たのですね」「これで我が国も安泰だ」という会話もあれば、「殿下は恋を実らせたのですね」「理想の結婚ですわ」と、フレデリックの恋の成就を祝う声も多い。
「皆の者、若いふたりを存分に祝ってやってくれ」
 皇帝はそう締めくくると、片手を軽く挙げた。すると、すぐに楽団の演奏がダンス曲へと移り変わっていく。祝いの場にふさわしく、明るい曲調だ。
「では、ファーストダンスはこのふたりに務めてもらおう」
「陛下の仰せのままに」
 フレデリックが胸に片手をあてて答え、ヴィヴィアンヌは跪礼する。
(とうとう殿下と婚約したのだわ)
 長い間ずっと避けてきたが、これでもうゲームのシナリオから逃げられない。今から半年後、彼と聖女が出会うまでの期間、しっかり婚約者の役目をまっとうする。悪女にならぬよう、厳しく自身を律し、きたるべき別れに備えなければならない。
 自分自身に念じていると、フレデリックが手を差し出した。
「ヴィヴィアンヌ、行こうか」
「……はい、殿下」
 互いに微笑み合うと、彼の手を取り階段を下りる。
 ふたりが降り立つと、出席者たちは左右に散ってダンスフロアまでの道を空けた。足を進める間にも、貴族らは興奮した様子で次代の皇帝と皇后を見守っている。
「さすがにここまで注目されると、ちょっと困るな」
 フロアの中央まで来たフレデリックは、ヴィヴィアンヌへ身体を寄せて囁いた。
「これでは、ステップを間違えたら恥をかきそうだ」
「ふふっ、殿下がダンスのステップを間違えたところなど、今まで一度も見たことがありませんわ。幼いころから、とてもお上手でしたもの」
「今日が初めて目撃される日にならないように、気をつけないといけないな」
 蒼天の空を思わせる瞳を愛しげに細められ、鼓動が高鳴る。
 いつも彼は、ヴィヴィアンヌの気負いや重圧を察し、冗談で息抜きさせてくれる。パートナーとして一緒に出席した催しは両手で数えても足りないほどにあるが、いずれもフレデリックがいてくれたからこそパーティを楽しむ余裕ができていた。
 フレデリックは音楽に合わせ、華麗にステップを踏んだ。比較的穏やかな曲調だが、難易度の高いダンスだ。しかし彼はまったくそう感じさせない軽やかさで、ヴィヴィアンヌをリードしている。
(いつも、殿下とのダンスは楽しかったわ)
 彼は、どんな曲でもヴィヴィアンヌが踊りやすいように動いてくれていた。高い技量を誇るフレデリックにふさわしいパートナーでありたいと、ダンスのレッスンは特に熱を入れたものだ。
「またダンスが上手くなったな、ヴィヴィアンヌ」
「殿下についていくだけで精いっぱいですわ」
 踊り始めると、緊張で凝り固まっていたはずの身体は、不思議と動いた。きっと幾度となく重ねた練習が身についているのだ。曲の終盤では会話を交わす余裕も生まれ、どんどん楽しくなってくる。
「ダンスが終わったら、皆に囲まれる。ある程度のところで、公爵のところへ行こう」
「かしこまりました、殿下」
 時折会話を交わしながらステップを踏むうちに、心弾む時間が終わる。ダンスが終わって礼をすると、周囲からは割れんばかりの拍手が鳴り響いた。
 楽しい時間はアッという間だ。パーティ後には、フレデリックに秘密を打ち明けなければならない。
 長い夜になりそうな予感を覚えるヴィヴィアンヌだった。

☆この続きは製品版でお楽しみください☆

amazonで購入

comicoコミカライズ
ガブリエラ文庫アルファ
ガブリエラブックス4周年
ガブリエラ文庫プラス4周年
【ガブリエラ文庫】読者アンケート
書店様へ
お知らせ

2023/4/28
電子書籍 ガブリエラブックス
『結婚した地味系青年と甘い初夜を迎えたら、何故か朝には美貌の公爵様にチェンジしてました!!』千石かのん・ill/旭炬
『転生悪役令嬢は、氷の侯爵を決死の覚悟で誘惑する バッドエンド回避で溺愛ルート突入です!』茜たま・ill/鈴ノ助

2023/3/30に発行致しました、ガブリエラブックスの各電子書籍ストアでの販売が2023/4/28頃より順次スタート致します。
ガブリエラシリーズはKindle版・Renta!版・楽天Kobo版・Yahoo!ブックストア版等々にてご購入できます。この機会にぜひご愛読ください。


2023/3/30
電子書籍 ガブリエラブックス
『悪役令嬢の娘なので、王子様はお断りいたします! イケメン王子は溺愛する令嬢との結婚に手段を選ばない』逢矢沙希・ill/KRN
『転生した男爵令嬢は、国王陛下の28人目の婚約者に選ばれました 陛下、今度の人生は溺愛されたいです』火崎勇・ill/なおやみか

2023/2/28に発行致しました、ガブリエラブックスの各電子書籍ストアでの販売が2023/3/30頃より順次スタート致します。
ガブリエラシリーズはKindle版・Renta!版・楽天Kobo版・Yahoo!ブックストア版等々にてご購入できます。この機会にぜひご愛読ください。


2023/2/28
電子書籍 ガブリエラブックス
『伯爵家のお荷物令嬢なので身を引いたのに、パーフェクトな義弟の執愛から逃げられません! 時戻りはワンナイト前のはずでした』竹輪 ・ill/氷堂れん
『伯爵令嬢は魔法を操るイケメン公爵に娶られ溺愛されてます 私の針仕事が旦那様のお命を救うんですか!?』北山すずな・ill/すがはらりゅう

2023/1/30に発行致しました、ガブリエラブックスの各電子書籍ストアでの販売が2023/2/28頃より順次スタート致します。
ガブリエラシリーズはKindle版・Renta!版・楽天Kobo版・Yahoo!ブックストア版等々にてご購入できます。この機会にぜひご愛読ください。


2021/1/25
電子書籍
ガブリエラ文庫プラス
2作品販売お知らせ


12月刊電子書籍【ガブリエラ文庫プラス】
1/『めちゃモテ御曹司はツンデレ万能秘書が可愛くってたまらない』小出みき・イラスト/小禄
2/『コワモテ不動産王の不埒な蜜愛』玉紀 直・イラスト/なま

2020/12/25に発行しました、現代物TLレーベル・ガブリエラ文庫プラス2作品の各電子書籍ストアでの販売が2021/1/25頃より順次スタートいたします。
ガブリエラ文庫プラスはKindle版・Renta!版・楽天Kobo版・Yahoo!ブックストア版等々にてご購入できます。この機会にぜひご愛読ください。


シャルルコミックスLink
スカイハイ文庫Link
ラブキッシュLink