ヌリタス 〜偽りの花嫁〜 上【本体1400円+税】

amazonで購入

●著:Jezz
●イラスト: なおやみか
●発売元:三交社
●発行元:メディアソフト
●ISBN:978-4815543150
●発売日:2023/05/30

あなたは俺のたったひとりの家族だ

伯爵家で下働きの少年として育った少女は、ある日、自分が伯爵の私生児だと知る。私生児の身分は最下層に近い社会。その存在を隠すため名前も付けず彼女を守ってきた母を伯爵に人質に取られると、異母姉の身代わりに悪鬼と噂される公爵ルーシャスに嫁がされる。「ヌリタス=無」と名付けられた彼女は、とても酷い目に遭うのを覚悟して嫁入りするも、公爵は噂とは違う男らしく優しい美丈夫で!?

7か国語でwebtoon連載された原作小説待望の日本上陸!
マンガアプリ「comico」と、comicoの海外版マンガアプリ「POCKETCOMICS」にて連載中!
全世界累計1億PVを突破した人気作!!!

☆comico連載ページはこちら☆



「俺のガウンが似合っているな」
 ルーシャスは昨日まで一人で使っていた寝室を見渡した。小さな体の彼女が一人いるだけで、春の風が吹きこんでいるような気がした。
 声をかけると彼女は驚いた拍子に窓枠に置いたグラスを落として割ってしまった。
 ルーシャスは、足首までの薄いシュミーズの上に自分のガウンを羽織った彼の妻を、じっくりと見た。
「すまない、驚かせてしまったか?」
 そして次に脱ぎ捨てられたドレスとペチコートの塊が目に入った。部屋の隅には、宝石が散らばっている。誰かが見たら、新婦と彼が格闘でもしたのではないかと誤解されてしまいそうだった。
ルーシャスは寝る前に一杯ずつ飲んでいたワインが一瓶空けられている事に気づいた。
「まさかそのグラスに入っていたのは、酒か?」
 頬を上気させた彼女が、割れたガラスの破片を踏みそうになっていることに気がついたので「そこから動くな」とルーシャスは制止の声を掛けた。
 彼はつかつかと彼女のそばへ歩み寄り、ぐっと彼女の腰に手を回して抱き上げた。ヌリタスは息の仕方を忘れてしまったかのように、呼吸を止めたまま彼の腕の中にいた。

(勝手に酒を飲んでいたんだ、これから殴られるのかな)
 ヌリタスはぎゅっと目を閉じ、次に起こるだろう恐ろしい出来事に耐える覚悟をしていた。だが、彼女の体はひょいっと床におろされ、公爵は彼女のそばから少し離れたところに立っていた。
 その時になってやっとヌリタスは床にガラスの破片が輝いていることに気づいた。彼女を傷つけようとしたのではなかったのだ。
「モルシアーニ家のワインは絶品だが、令嬢にも人気があるとは知らなかったな」
 公爵は少し悪戯っぽい声でそう言った。ヌリタスは全身に酒と羞恥が回り、意識が少し朦朧とするのを感じた。
「君も気に入ったのかい?」
 公爵はワインを新しいグラスに注ぎ掲げた。
「改めて、俺たちに乾杯しよう」
 ヌリタスは「俺たち」という言葉を聞き、その場で固まってしまった。公爵は何杯かワインを飲み、彼女はその姿を見つめていた。
(「俺たち」なんて言葉は、似合わない)
 彼は名誉ある家門の公爵であり、戦争で手柄をあげた英雄だ。一方こちらはついこの間まで豚小屋掃除をしていた私生児にしかすぎない。高貴な血が流れる彼の前に立つとその天と地ほどある差を実感してしまった。
 ルーシャスはワインを程よく呑むと、まるで石像のように固まったまま動けなくなってしまっていたヌリタスに近づき、手首をひきベッドの近くまで連れていった。
(ついに初夜だ)
 ヌリタスは、喉を鳴らす。
 これからされる事に、できるだけ感情を殺そうと努力しながら、ベッドに上がった。メイリーンの代わりに公爵家に嫁ぐと決めたときから覚悟していた。どうせあのまま公爵家にいればアビオに奪われていた純潔だ。
(怖くない、大丈夫だ。豚にだって初めてはあるんだから)
 彼女がベッドに上がると、公爵も羽織っていた服をスルッと脱ぎ、楽な服装でベッドへ入ってきた。
ほぼ裸の男が近くにいることで、せっかくの固めた決意が揺らぎそうになる。彼は、ワインの甘い香りのする唇を開き、こう言った。
「長い一日だったから、もう休もう」
 ヌリタスはこれが何かの合図なのかと思い、自分の役目を果たすべく、ガウンの紐に手をかけた。だが、そこで、果たしてこのまま自分からガウンを脱ぐことが正しいのかどうかわからずに、ためらってしまった。

☆この続きは製品版でお楽しみください☆

amazonで購入

comicoコミカライズ
ガブリエラ文庫アルファ
ガブリエラブックス4周年
ガブリエラ文庫プラス4周年
【ガブリエラ文庫】読者アンケート
書店様へ
シャルルコミックスLink
スカイハイ文庫Link
ラブキッシュLink