●著:山野辺りり
●イラスト:ウエハラ蜂
●発売元:三交社
●発行元:メディアソフト
●ISBN:978-4-8155-2052-6
●発売日:2020/05/25
そのまま僕に溺れてしまえばいい
没落した伯爵家のエイヴリルは、驕慢だった過去を反省し慎ましく暮らしていたが、困窮する職場への援助と引き換えに、伯爵令息クリスティアンと結婚する。エイヴリルは幼い頃、彼を苛めていた過去があった。クリスティアンの目的は彼女への報復ではないかと思うエイヴリルだが、彼は情熱的に妻を求め溺愛する。「僕の理性を試す真似はやめてもらえますか」美貌や才能に恵まれながら、エイヴリル一人に執着し続ける彼の真意は!?
「……首に縄をかけられた気分だわ」
「ははっ、それも悪くありませんね。目を離すと逃げ出しそうな貴女に、専用の首輪を贈って差し上げましょうか」
エイヴリルの細首に添えられた彼の手が、僅かに圧を帯びる。
呼吸できないほどの力ではないけれど軽く絞められ、エイヴリルは瞠目した。
こうして間近で密着していると、ガウン越しでもクリスティアンの引き締まった体躯が感じられる。きっと本気で押さえ込まれれば、エイヴリルの首など簡単に折られてしまうだろう。
冗談とは笑い飛ばせない空気に、身動きできない。
しばし見つめ合った後、先に動いたのは彼の方だった。
「……そんなに怯えた目をしないでください。流石に僕も、せっかく手に入れた花嫁を初夜に殺すつもりなんてありませんよ。本気のはずがないでしょう」
嘘だ。
半分か、もしかしたらそれ以上、本気だったはずだ。
いつもの人当たりのいい微笑を浮かべていなかったことが、何よりの証拠。
すっかり委縮してしまったエイヴリルに向けられたのは、本心を窺わせない漆黒の瞳。
だがその奥に、微かな悲しみが感じられた。エイヴリルが意図を掴み取る前に、瞬き一つで掻き消されてしまったけれど。
「……貴女だけが、僕の全てを掻き乱す」
「あっ……」
裸の乳房をクリスティアンの手に包みこまれ、エイヴリルは悲鳴を噛み殺した。
歯形には触れぬよう、慎重に揉みこまれる。自分で触れても何も感じないそこは、かつてないほど感覚が鋭敏になっていた。
ほんの少し頭を起こせば、自分の胸が彼の手で好き勝手に形を変えられている。白い柔肉が卑猥に捏ねられ、頂の果実が一層赤みを増していた。
下腹が甘く疼く。
知らない感覚に戸惑い、エイヴリルは淫猥な光景から目が逸らせなかった。
「ま、待って……!」
制止しかけたのは、クリスティアンがエイヴリルの乳房に顔を寄せたからだ。また噛みつかれるのかと思い、痛みに備える。
しかし予想した痛苦は与えられず、逆に背筋が戦慄くような快感が襲ってきた。
先ほどエイヴリルの口腔を散々蹂躙した彼の舌が、胸の飾りを舐っている。尖らせた舌先で硬く なった先端を突き、かと思えばもどかしく擽る。
強めに吸われると、紛れもない喜悦がエイヴリルの四肢を震わせた。
「んんっ……!」
「声を堪えないでください」
懸命に口を押えていた手を剥がされ、唇が戦慄く。
閨については全て夫に任せろと教えられたけれど、どこまで本気にしていいのか分からなかった。
世の中の夫婦は本当に皆同じことをしているのか。
この後何をされるのか想像できない分、惑乱する。耐えねばならない痛みの試練は、いったいどれほどなのだろう。
羞恥と混乱の中、エイヴリルはつい唇を噛み締めた。すると咎めるキスが落ちてくる。
「緊張しなくて大丈夫です。僕の言う通りにしてください」
優しくできないという趣旨のことを言っていたのに、ガチガチに強張ったエイヴリルの身体を解してくれるクリスティアンは真逆だ。
柔らかく囁かれ、つい言いなりになってしまう。
僅かでも恐怖が薄れるならと、促されるまま彼の背に腕を回した。
「……可愛い」
ほんの微かな呟きは、たぶん聞き間違い。エイヴリルの動揺が作り出した幻聴に過ぎない。
クリスティアンの手が腹を通り過ぎ薄い叢に触れ、エイヴリルはそれどころではなくなった。
「ゃあ……っ」
誰にも触れられたことのない場所に、男の指先が這い回る。
秘裂を上下に摩られると、得体の知れない衝動が大きくなった。
身体の奥。存在も意識したことのない場所が騒めいて仕方ない。むず痒いような落ち着かないものが、どんどん育ち凶悪になっていった。
「さっきよりも、潤んでいるのが分かりますか?」
「ん、ァっ……」
言われてみれば、最初に触れられた時と感覚が違う。乾いていた肌が、湿り気を帯びているような気がした。
ぬるりと滑った彼の指先に肉のあわいを擦られる。ほんの僅か隙間に入りこまれ、エイヴリルはビクリと背筋を強張らせた。
「貴女が僕を受け入れようとしてくれている証です。でもまだ足りない」
「……ひっ?」
両腿を抱え直されたと思ったら、身体を二つ折りにされた。
頭と肩だけがベッドについた状態で、下半身を持ち上げられる。ふしだらに開脚したまま恥ずべき場所を天井へ向かせられ、エイヴリルは愕然とした。
「クリスティアン様……っ?」
「貴女の花が、よく見える」
恥ずかしさが、限界値を突破した。
全身に新たな汗がぶわりと浮かぶ。苦しい体勢から逃れたくても、不安定なせいか上手くいかない。
せめて脚をばたつかせようとしたが、がっちり抱え込まれていては無理だった。
「や、やめてください」
「お断りします」
「ひぅっ」
これ以上の辱めはない、と思った直後、エイヴリルは自分の認識の甘さを突きつけられた。
無防備な蜜口に、彼が口づけたからだ。
「き、汚いですっ」
自分の知る常識から、かけ離れ過ぎている。
不浄の場所を舐めるだなんて、絶対にあり得ないことだった。
この体勢では後孔だって丸見えなのではないか。そう考えれば、意識が遠くなる。
己の恥ずかしい場所を全部暴かれ、自尊心が砕かれた。だが同時に、絶大な快楽を得ているのも事実だった。
「……ぁ、あッ……」
ぴちゃぴちゃと音を立てクリスティアンが舌を蠢かせる度、喜悦が弾ける。尿意に似た感覚がせり上がり、勝手に爪先へ力が籠った。
敏感な花芯を舐め転がされると、全身がひくつく。
いくら口を閉じようとしても、嬌声が漏れるのを完全に抑えることはできなかった。
「あ……ぅ、ゃあ、あっ……」
「貴女の蜜が溢れてきました。どんどん垂れてしまう。……勿体ないな」
「ひ、ぁんッ」
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