●著:東 万里央
●イラスト: Fay
●発売元:三交社
●発行元:メディアソフト
●ISBN:978-4815543396
●発売日:2024/4/30
今度こそ君を守りたいんだ
勤め先の女学校が資金難で廃校になるのを阻止すべく、友人知人を訪ね歩くレオノーラ。
難航する金策に悩む彼女の元に、学生時代の元彼で公爵のザカライアが現れた。
レオノーラは彼に弄ばれたと思っていたが、ザカライアは女学校への援助を条件に復縁を迫ってくる。
「私の妻になる女性は君以外考えられない」
有能で美貌なザカライアからの激しい執着にとまどうも、彼に溺れていくレオノーラは!?
「お、終わったわ」
「そうか。じゃあ私も」
「えっ……」
ザカライアはレオノーラが目を背ける前に、なんの躊躇いもなく濡れたシャツを脱ぎ捨てた。
「ちょっ……!」
意外に逞しい肉体が露わになる。
ザカライアはいつもは漆黒の制服で、今日はネイビーブルーのジャケットとズボンだ。どちらも体を引き締めて見せる色だからか、てっきり細身なのだと思い込んでいたが、胸板はしっかりした胸筋に覆われていて厚く、二の腕にもしっかりと筋が浮き上がっていた。
「……!」
慌てて背を向けて膝を抱える。
「もう、ちゃんと今から脱ぐって言ってよ!」
「私は男だからな。別に見られてどうということもない」
「あるわよ! もう……」
心臓が早鐘を打っている。
ザカライアを好きだと思ったことはあったが、生身の男性として意識したのはこれが初めてだった。
女の自分とはまったく違う肉体だった。柔らかさなどどこにもなく、力強さと雄々しさしか感じられない。
「レオノーラ」
名を呼ばれて恐る恐る隣を向く。
同じくシーツで身を包んだザカライアが腰を下ろしていた。
「すまない。だけど、意外だったな」
「……何が?」
「君は男の裸くらい平気だと思ってた」
「平気じゃないわよ。お父様のしか見たことがないんだから」
ザカライアが黄金色の瞳を細めてくすりと笑う。
「君は可愛いな」
「……ご機嫌取りなんてしなくていいわ」
「私は嘘を吐かないと知っているだろう?」
レオノーラがザカライアの目を見返すと、そこにはレオノーラだけが映っていた。
きっと自分のエメラルドグリーンの瞳にも、ザカライアだけが浮かんでいるのだろうと思う。
この小屋にはザカライアと自分しかいない――そう気付いた次の瞬間、唇を奪われていた。
「んっ……」
初めてのキスとはまったく違う。
互いの熱を確かめるような情熱的な口付けだ。
「ん……ふ……」
歯茎をなぞられると肩がびくりと震えてしまう。肩を力強い手で掴まれても不思議と怖くはなかった。
「レオノーラ……」
唇が離れ、再び重ねられる。
――熱い。つい先ほどまで寒かったはずなのに肌が火照って、なのにもっと熱がほしくてたまらなくなった。
ザカライアの唇が今度は鎖骨に落とされる。
「あっ……」
体から力が抜け落ちて支え切れず、ザカライアともども絨毯の上に倒れ込んだ。
体を包んでいたシーツがはらりと落ちる。
思わず胸を隠そうとしたのだが、絨毯に手首を縫い留められ、それ以上動かすことができなくなった。
ザカライアの視線が胸から平らな腹部。腹部から足の間に落ちる。
「レオノーラ、綺麗だ」
「……っ」
レオノーラは経験がなかったが、これから何が起こるのかを知っていた。
「ざ、ザック……」
「……嫌かい?」
嫌かと問われると違うと答えられる。
「ち、違うの……」
だが、恐ろしい。体を重ねたその先にあるものが何も見えないから。
「わ、私、初めてで……だ、だから……怖くて……」
「私もだよ、レオノーラ」
さすがにこの一言には目を見開いた。
「ざ、ザックは女の人としたことないの?」
自分が知らないだけでてっきり経験済みだと思い込んでいたのだ。
「君とでなければ意味がない」
「……」
その気になればいくらでも女など手に入るだろうに。
なんだかおかしくなってくすりと笑う。
「じゃあ、うまいとは限らないのね」
「……もちろん頑張る」
レオノーラはザカライアの手の力が緩んだタイミングで手を伸ばし、そっとひんやりしたその頬を愛おしげに触れて撫でた。
「愛しているよ、レオノーラ」
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