●著:高峰あいす
●イラスト: SHABON
●発売元:三交社
●発行元:メディアソフト
●ISBN:978-4815543211
●発売日:2023/07/28
俺の手で乱れる姿は興奮する
前世で愛読した漫画の悪役令嬢に転生してしまった春鈴。
物語の中で皇太子・青藍に断罪されるバッドエンドを回避するために彼との接触を避けようとするが、青藍はなぜか物語とは違い春鈴に執着してくる。
「君の隅々まで堪能させてくれないか」
甘く淫らな愛撫で蕩かされるうちに彼に惹かれていくも、皇宮に不穏な空気が漂い始め……!?
「夢帰りは関係なく、その男には既に政治的なものが絡んでいる。深入りしない方がいい」
「分かったわ」
これには春鈴も、真剣に頷く。
話の筋が変わっているのは確定事項なので、何が起こってもおかしくない状況だと判断したのだ。
──湖延利が、『延利』だって決まったわけじゃない。でも、湖延利なんてキャラは、政治に関わるような主要人物にはいなかったわ。
『亡国の龍姫』には多くの人物が出てくる。春鈴は何度も読み返していたので、名前のあるキャラクターは全員憶えていた。
それこそ一コマしか出てこないモブでも、全員の名を言える自信がある。
だから『湖延利』というキャラクターは、本編でも番外編でも絶対に出てきていないと断言できた。
──何が起こっているの?
自分が考えていた以上に、この物語は変化している。
不安を覚えた春鈴は、先日の服毒事件の真実を青藍に話そうと決める。後宮内の警備が厳しくなったのは、父の部下が出入りしてるところを見られたせいだろう。
もし捕まりでもしたら、春鈴がいくら無実を訴えても逃げられるはずはない。
「青藍、私あなたに隠し事をしていたの。この間の毒は、……私の父が送ってきたものなの。貴方を殺すようにと言われたわ」
この告白に、流石に青藍も絶句している。
「私は青藍を害するつもりなんてないわ。本当よ……信じて」
「俺は一度だって、春鈴を疑ったことはないよ。この件は誰にも言わないから、春鈴も胸にしまっておけばいい。亞門殿に関しては、改めて対策を考えよう」
優しい言葉に涙が出そうになる。
悪女として糾弾されても仕方ないのに、青藍はどこまでも優しい。
「ねえ青藍。悪い噂ばかりの私を、どうして信じてくれるの? 今回の事だって、次期皇帝暗殺を企んだ大逆の罪なのよ」
「君は毒を手に入れても、俺を殺さなかった。それが全てだろう。君と父君の考えは違っている。だから俺は、春鈴を責めるつもりはないよ」
抱き寄せられ、春鈴は青藍の膝の上に横抱きにされた。
普段は春鈴に対しては甘えるような言動の多い青藍が、とても頼もしく感じる。
「そんな悲しい顔をしないでくれ。もっと君を支えられるよう次代の皇帝らしくするから、俺を好きになってほしい」
「貴方は十分立派で、次代の皇帝に相応しい人よ、青藍」
「未熟者の俺にそう言ってくれるのは君だけだ」
大きな掌が、春鈴の頬を包み込む。剣術を得意とする青藍の手は、次期皇帝であるにもかかわらず硬く節くれだっている。
文武共に完璧であるよう努力してきた結果を感じて、春鈴はその手に自分の手を重ねる。
──頑張ってるのよね。
父を亡くし、失意の底にいる青藍を支えるのは美音の役目だと知っている。けれど彼女がいない今、支えになるのは自分しかいない。
「俺は春鈴を守りたい」
「私も、今の私にできることで青藍を支えたいわ」
すると青藍が春鈴の額に口づける。呆気に取られていると、青藍は春鈴を抱いて椅子から立ち上がり寝台へと向かう。
「君が欲しい」
啄ばむように唇が重なり、それは徐々に深いものへと変わっていく。
「ぁ……」
薄く開いた唇の隙間から、青藍の舌が口内に入り込む。優しく舌先が絡まり、歯や上顎をなぞるみたいに舐められる。
こんなに深い口づけをするのは、初めてだった。
「……っん、くるし……」
「鼻で息をして。ゆっくり進めるから、口が離れたら息を吸い込むんだ」
「え、ええ……」
ぼうっとする春鈴は、青藍の言葉を完全に理解しないまま頷く。
舌の絡み合う音が、聴覚からも春鈴を苛む。
──わたし……なに、して……?
いつの間にか寝台に下ろされた春鈴に、青藍が覆い被さってくる。
気付けば着物の前がはだけられ、帯も解かれてしまっていた。素肌を守る最後の一枚に、青藍の指がかかる。
咄嗟に身を捩った春鈴に、青藍が囁きかける。
「俺に全てを見せてくれ」
「待って、青藍……」
震える手で、彼の胸を押した。青藍からすれば、抵抗にもならないはずだ。けれど彼は、辛抱強く春鈴の言葉を待ってくれる。
「……私、初めてで……どうしたらいいか……」
泣きそうになりながら、春鈴は怯える気持ちを口にした。
「夢の世界でも、したことなくて。こわいの……本当なの。信じて」
悪女だという噂は、青藍の耳にも入っている。具体的には側仕え達へのひどい仕打ちや、浪費だ。まことしやかに、『霧国でも毎夜男を侍らせ享楽に耽っていた』との話も囁かれている。
しかし乱れた男女関係に関しては、完全な嘘だ。
霧国で暮らしていた頃は、まだ子どもだったこともあり我が儘を言うだけで満足していた。なので性的な遊びを憶え、本格的な悪女となるのは物語上これからなのである。
「君の言葉を疑ったりしないよ。それに、触れれば分かるしね」
大きな掌が、あやすように春鈴の頬を撫でた。
「俺は君と悦びを分かち合いたい。優しくすると約束するから、どうか身を預けてくれないか?」
指先が頬から首筋をなぞり、胸元へと降りていく。
くすぐったくて息を詰めた春鈴に、青藍が優しく微笑んだ。
「春鈴は敏感だな。可愛いよ」
「私、可愛くなんか……っあ……」
合わせ目から入り込んだ指先が、頭頂部を軽くはじく。刺激にびくりと体を竦ませると、すぐに青藍が口づけてくれる。
擽るように弄られたかと思えば、胸全体を包むように揉みしだかれる。
気が付けば春鈴は、肌を露わにして身悶えていた。
──そういえば青藍は、遊び人なのよね……。
物語の中でも、青藍は多くの女性と浮名を流す遊び人という設定がある。これに関して美音と一悶着あるのだが、春鈴には関係がない。というか、春鈴と青藍が床を共にする描写は全くなかった。
「どうしたんだい?」
いつの間にか青藍も服を脱いでおり、その均等の取れた逞しい体躯に月明かりがさして、筋肉の陰影が浮かび上がっている。
これまでは服に隠れて分からなかった立派な胸筋や割れた腹筋に思わず見惚れてしまった。しかし視線を落とすと当然ながら彼の性器が視界に飛び込んでくる。
「なんでもないわ。その、慣れてるなって思っただけ」
気恥ずかしさを誤魔化すように言っただけなのだけれど、何故か青藍が真顔になる。
「そりゃあ少し前は、遊んでいたけれど。春鈴が鵬国へ来るって決まってからは、一切そういった事はしてない!」
「え……そうなの?」
「俺には君だけだ」
「あっ、青藍っ」
無防備な下半身に手が伸び、臍の辺りを撫でる。驚いて止めようとする春鈴を上手く躱しながら、ゆっくりと指が秘所に触れた。
「っ……ぁあ……」
敏感な花芯を初めて他人に触れられ、春鈴は小さく悲鳴を上げる。
「春鈴、声を抑えないで」
「でも」
円を描くように指先が敏感なソコを弄ってから、不意に離れた。けれど愛撫が止まったわけではなく、周囲を撫でたりさらに下の秘めた入り口をそっと押してみたりと、まるで焦らすような動きが続く。
片手で胸を、もう片手で秘所を愛撫され、春鈴はどうしていいのか分からない。
──だめ……だめなのに……。
「愛してるよ。春鈴。俺の大切な宝石」
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