●著:小山内慧夢
●イラスト: 鈴ノ助
●発売元:三交社
●発行元:メディアソフト
●ISBN:978-4815543198
●発売日:2023/07/28
私は君を抱きたいと思っている
地理学の研究に熱心な男爵令嬢イリニヤは、興味深い地層がある公爵邸に惹かれお屋敷に雇われようとしたが、処女は公爵の美貌に惑わされるのでダメだと断られる。
ならば処女を捨てようと、謎の美貌の青年と一夜を共にし再び面接に挑むも、公爵アドルフこそ、その青年の正体であった。
「本当かな? 君は思わせぶりな態度で人を惑わせるから」
無事雇われるも、彼に誘惑され口説かれる日々が始まり!?
アディは紳士的だった。
言葉で辱めるようなことは一切しなかったし、痛みを与えることもなかった。
身体の強張りを取るように肌に触れ、撫でさするのも、イリニヤが待ってと言えば落ち着くまで待ってくれた。
きちんと次の手順を口にして、イリニヤを怯えさせることがないように配慮してくれた。
性的な場所に触れられる前から、すでにはしたないほどにぬかるんだ脚のあわいに触れられたとき、イリニヤは大袈裟に息を呑んでしまった。
「やめようか?」
気づかわしげに覗き込んだアディの顔に蔑みの色がないことに、イリニヤはひどく安堵した。
「ちょっと、驚いただけ……っ、あの、変じゃない? こんなに濡れていて……」
まるで行為以上のものをアディに期待しているようで、自分がひどく浅ましく感じられた。
しかしアディはそんなことはない、と静かに囁く。
「君に痛い思いをさせたくはないからね、安心した。触れるよ?」
顎を引いて同意すると、アディの長い指が淡い和毛を擽り秘裂を這った。
ぬるぬると蜜を纏わせると指先がぬくりと潜り込む。
「あ……っ」
思わず声が引き攣れたが、アディの指は止まらなかった。
聞こえなかったのか、それとも別の事情があるのか。
しかしイリニヤはすぐに考えられなくなった。
丁寧に時間をかけて、しかし今までよりも明らかにイリニヤの官能を引き出すような動きに未知の感覚を味わっていた。
(え? え、え?? 待って、これはなに?)
狭い蜜洞の入り口を慣らすように何度も抽送し、ザラザラしたところを摺り上げる動きにおかしな声が出そうになり、自らの手で口を塞ぐ。
くぐもった声に快感が滲んでくのを、イリニヤは信じられない思いで聞いていた。
口を閉じていられない、感情を吐露したいという衝動が溢れて止まらない。
「ふっ、……っう、うぅ……っ」
苦しげなイリニヤの声に呼応するようにアディの指の動きが激しくなる。
ぐちゅぐちゅと淫らな水音をさせて指をさらに奥まで突き入れて解すように動かす。
「う、ぁあ……っ、ア、ディ……っ」
一際高い声がでて、ひくり、と腰が戦慄く。
アディの指がひどくもどかしいところを掠めたのだ。
イリニヤの蜜洞がきゅ、と収縮し指を締め付ける。
「あぁ、イリニヤ。ここがいいんだね」
蕩けるように甘い声がして、指の腹をそこに擦り付ける。
途端にイリニヤの腰が跳ね、静止の声が上がる。
「やっ、待って! そこダメ……っ」
なぜ自分の腰が跳ねたのかわからず、イリニヤは混乱する。
しかしアディは激しくそこを責め立てる。
グチグチと耳を塞ぎたくなるような音が羞恥を煽る。
イリニヤの口からはひっきりなしに喘ぎ声が漏れた。
同時にキュウキュウと胎の中が収縮しているのがわかる。
頭の中に白い靄がかかり、それを必死に振り払うように首を振る。
なにかが近付いてきている。イリニヤは訳もわからずにアディの名を呼んだ。
「アディ、……アディ! どうしよう、なにか……、あ!」
チカチカと目の前が白く明滅する。
身体の奥の方からなにかがせりあがって、出口を求めて暴れているようだった。
奥が切なくて、なにかに縋りたくてさまよった手がアディの首を見つけて無意識に引き寄せた。
「いいよ……イって」
「あ……っ、あ、あぁ……っ!」
きゅうう、と中が引き絞られてなにかが弾けた。
身体が弛緩して全身の毛穴が開いたような感覚がイリニヤを支配した。
意味のない喘ぎ声がただの呼吸音になり、胸の上下が落ち着いたころ、アディは再び指を蠢かし始める。
「あっ? なに、まってまだ……っ」
さきほどの衝撃がいわゆる『気をやった』ということだと思い至るが、その余韻に浸る間もなくイリニヤの中をアディの指が暴いていく。
「ねえ、そもそもこんなに、こ……これ、必要なの? もっとこう、簡単にしてもらっていいんだけど」
具体的なことは言えず、ずいぶんとぼやけた言葉になってしまうのがもどかしい。
イリニヤがもっている閨知識では抱き合って適度に身体に触れ挿入、子種を出すというもののため、 挿入の前にこんなに時間をかける必要が果たしてあるのかおおいに疑問である。
アディは『……はぁ』とあからさまなため息をつくが、それでも指を緩慢に動かしながら口を開く。
「男性の昂る性器を受け入れるのはとても大変なことだよ。これは君が痛みを覚えないために最低限必要なことだと理解してくれ」
イリニヤは頷くが、納得いったわけではなかった。
それでも反論しなかったのは、アディの眉間に来た時にはなかった深いしわが刻まれていたのをみつけたからだ。
(そう言えば処女は面倒くさいと聞いたことがあるけれど、こういうことなのかも……そうか、そりゃそうよね。アディにしたら厄介事でしかないのか)
手間も時間もかかってしまうイリニヤの処女喪失は、アディにとって慈善行為なのだろう。
そう思うと情けなくも悲しくて気が重くなる。
なにかお礼をしなければならない、と頭の隅で考えていたイリニヤは、急に意識を引き戻された。中を解す指が増やされたのだ。
「あ……っ、や、そんな……二本も、むり……っ」
一本だけでも違和感がすごかったのに、と声を上げる。
しかしアディはやめる気はないようで、その動きをますます速めた。
「指二本でこんなにぎゅうぎゅうじゃ、まだ足りないくらいだよ。せめて三本分に慣れないと」
まさかのアディの発言にイリニヤは気が遠くなるような気がした。
それが表情に出たのだろう、アディは口の端を上げた。
「安心してくれ、夜はまだ長い」
こんなことが延々と続く夜なんて、そんなの安心できるわけない……!
イリニヤはそう叫びたかったがアディの指がまだ知らないイリニヤのいいところを見つけたために、それは叶わなかった。
もう指一本も動かせない。
イリニヤは胸元が乱れたバスローブを治す気力もなく空気を求めて喘いだ。
中を暴く指が増えるごとに快感が増していき、もう人の言葉を話すこともできない。
しかし先ほどとうとうイリニヤの隘路が三本指の責め苦を耐え切った。
かなりはしたない声を上げたような気がするが、思考に霞がかかったようになっていて、よく覚えていない。
いまも足をだらしなく開いたままだ。
淑女としてなんとか足を揃えたいが、残念ながらアディの身体が足の間に陣取っているためできない。
閉じようとしたところでアディの腰を挟むことにしかならない。
「はぁ、はぁ……、アディ……」
高みに上り詰めたイリニヤの中から指を引き抜いたアディは沈黙している。
どうしたのか、と疲労しきった身体に鞭打って頭を起こすとアディがバスローブの帯を解いていた。
その中心にそそり立つものを目にしたイリニヤは身体が強張るのを感じた。
(うそ……そんなことって!)
中を指で解される行為があまりにも衝撃的だったイリニヤは、三本分を受け入れきったことで達成感を味わっていた。
だがアディの昂りを目の当たりにした今、それが男根を受け入れるための前準備に過ぎないとやっと実感したのだ。
本番はこれからだというのに。
「あの、アディ。あなたのソレ……」
イリニヤは目が離せなかった。
美しいアディに不釣り合いなほど荒ぶるソレは下腹部で雄々しく勃ち上がり、まるで違う生き物のような存在感でイリニヤを圧倒した。
「あぁ、すまない。本当はここまで大きくするつもりはなかったのだが」
申し訳なさそうに言葉を濁したアディが、肉棒をゆるゆると扱く。
凶悪なまでの淫らさを纏ったそれは、先端から透明な液体をこぼした。
(とてもじゃないけど、ムリだわ!)
イリニヤの怯えた様子に気付いたのか、アディが弁解する。
「大丈夫。十分に解したし、君の負担になるようなことはしない。ただ、少し入れるだけだから」
どこかで聞いたことのあるセリフだと思ったら、先ほどの酔客の言葉だと気付く。
初心な女性を騙す詐欺師のような口振りに、そうではないとわかっていても身体が強張る。
いや、もしかして自分は騙されているのでは。
おかしな思考が湧いたが、そもそも自分がアディに頼んだことだったと、イリニヤは思い直す。
(そう、多少痛い目を見るのも自業自得というもの)
覚悟を決めたイリニヤはきつく瞼を閉じて、両手でシーツを握りしめた。
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