契約結婚につき溺愛禁止です!
エリート御曹司と子作り生活
【本体685円+税】

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●著:天ヶ森 雀
●イラスト:上原た壱
●発売元:三交社
●発行元:メディアソフト
●ISBN:978-4-8155-2058-8
●発売日:2020/10/23

初めて会った時からずっと特別な存在だった


本人は平凡だがエリート揃いの家庭に生まれた小鳥遊ハルは、婚活パーティで昔から憧れていたエリート御曹司、九条壱弥と出会い、優秀な遺伝子が欲しいと口説かれ、子作りのための契約結婚を承知してしまう。「ハルはどこもかしこも柔らかいな」大好きな彼に甘く蕩かすように抱かれ、日常でも優しくされる日々。このままでは子どもができた後の別れが辛くなると、壱弥に溺愛を止めるよう思わず訴えた途端に、彼が冷たくなって!?




「本当はね、ずっと好きな人がいたんです。でも私にはどう見ても無理めの人で」
 釣り合うわけがない。ずっとそう思っていた。何せ大企業の御曹司だ。しかもとっくに大人の。でも気が付けばいつも面影を追っていた。
 高校生だった頃の壱弥。大学生になった壱弥。大学を卒業し、父親の企業に入って働き始めた壱弥。会う度に彼の輝きは増し、胸は高鳴って苦しくなった。
 何度も忘れようとしたのだ。小学生だった時も中学生や高校生になった時も、なんで会う度にこんなに胸が苦しくて焦がれる気持ちになるのが不思議だった。
 けれど父親を介してしか会うことはかなわないし、そもそもこんな子供の自分がアタックしたところで相手にしてもらえないのは目に見えている。
 これはただの憧れ。夢見がちな子供の思い込み。そう思って忘れようともした。だけど彼はずっとハルの胸の中に居続けた。自分のしつこさには呆れるくらいだが、今でもそれは変わっていない。
 しかしこんな風に再会出来たのなら、冗談に紛れさせて告げてしまうくらいは許されるかもしれない。
「きっと私の中にあるかもしれない小鳥遊の『情熱』という才能は、その人に全部持っていかれちゃったのかもしれません」
 だから、笑ってくれればいい。壱弥本人が「そんなこともあるんだね」と笑ってくれれば、ようやっとこの長い初恋にも終止符が打てるかもしれない。
 そう思ったのに。
「まだその人が好き?」
 壱弥はなぜか考え込むような、難しい顔になっていた。
「え? ええ」
 目の前にいればそれは抗いようのない事実だった。何度も夢に見た相手だ。その彼が、今ハルの目の前にいる。意識ではなく本能で答えていた。
「でも無理そうだから諦める」
「……ええ」
 思わず目を伏せた。釣り合わないし似合わない。卑屈になっているわけではなく、素直にそう思う。壱弥ならもっと似合う人がたくさんいるだろう。聡明で麗しくウィットに富んだ素敵な相手が。
「じゃあ、そいつの代わりに俺に君の遺伝子をくれないか?」
「―――は?」
 思ってもいなかった壱弥の発言に、本気で脳が追いつかず素っ頓狂な声が出た。
 今、なんて仰いました?
 誰の代わりに? 欲しいって遺伝子を?
「君が望むような平凡さは俺には足りないかもしれないが……その分大事にする。君の望むことはできるだけ叶えるし、不自由もさせない。だから俺に君の遺伝子を提供してくれないだろうか」
 何を言ってるの、この人は。全然意味が分からない。
「ちょっと待ってください! 確かにうちの家系は奇人変じ……じゃなかった、それなりに好きなことで身を立てた人が多いですけど、私自身はただの一般人ですよ? 九 条さんが望むような才能とか遺伝子を持ってるとは限らないじゃないですか!」
「元々、養子である俺の出自に危惧を抱く役員は少なくない」
「え?」
「どこの馬の骨とも分からない奴に九条グループを託すのは不安なんだろうな。それは俺も良く分かる」
「でも……! それは九条さん自身の優秀さが認められて養子に入ったわけでしょう?」
「ああ。だから表だってそう言う奴はいない。しかし結婚相手くらいは出自のしっかりした女性の方が安心に越したことはない。その点、小鳥遊教授のお嬢さんなら申し分はない。教授の研究が我が社にもたらした恩恵は大きいからな」
 壱弥の会社から資金提供を得ることで父のシステム研究は順調に進められ、その成果を会社に還元していた。そういう意味では父の九条グループ内での扱いは大きい。その実ただの研究馬鹿なのは、身内内での周知の事実だ。
「でも……」
「ずっと好きな奴がいるんだろう?」
 その当人に、これ以上なく熱く見つめられて言葉が詰まる。
「恋とか……恋愛感情も情熱の最たるものじゃないのか?」
「それは……」
 そうと言えなくもないかもしれないが。
「でも私に大企業の御曹司の妻なんて……無理だと思います」
 一般教養くらいは身につけたつもりだが、セレブな世界には縁がない。せっかくなれた保育士だってやめたくはないし、自分に大企業経営者の妻が務まるとはとても思えない。
「……わかった。それじゃあ子供ができるまででいい。俺の子供を産んでくれたら、……そうだな、授乳期間が終わったらその後は君を解放しよう」
「産まれた子供はどうするんですか!」
「それは……申し訳ないがこちらで引き取る。もちろん会いたい時はいつでも会えるようにするし、相応の礼もさせてもらうつもりだ」
「九条さん、言ってることおかしいですよ!」
「分かってる。だけど俺には……君の遺伝子が必要なんだ」
 熱い目にじっと見つめられて、思考がバラバラに分解しそうだった。
 何を言ってるのこの人。っていうか、子作りって事はしなきゃいけないプロセスがあるわけで。
 ……え? え〜〜〜〜〜?
「そんなに……私の遺伝子が欲しいんですか?」
 あるかどうか分からない才能や情熱が?
「ああ、欲しい」
 低い声で囁かれて、背筋に鳥肌が立ちそうになった。まるで自分自身が求められているみたいだ。あんなに好きだった壱弥が、ハルに懇願の目を向けている。
 やばい。溶ける。溶けて堕ちそうだ。

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