激甘CEOと子育てロマンスはじめました!
【本体685円+税】

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●著:水島 忍
●イラスト:氷堂れん
●発売元:三交社
●発行元:メディアソフト
●ISBN:978-4-8155-2053-3
●発売日:2020/06/25

君をもっともっと幸せにしたい


友人の結婚式で知り合った神沢遼司と交際を始めた菜月。イケメンで有名企業のCEOの彼とは社会的に釣り合わないはずなのに、不思議なくらい気が合い親密になっていく。「恥ずかしがらなくてもいいんだ。君はこんなに綺麗なんだから」求め合い結ばれて、幸せの絶頂に。だがある日突然、彼から電話で別れを告げられる。ショックを受けつつ諦めきれずに彼を訪ねた菜月は、遼司が苦心しながら子どもを世話をしているところを目撃し!?




「さあ。お姉ちゃんと一緒に食べようね」
 冬真は小さく頷いたものの、残念なことに笑い返してはくれなかった。おとなしいようだから、人見知りする子なのかもしれない。
 菜月は子供が好きで、年の離れた従兄弟の相手をよくしていたので、幼児の世話はしたことがあった。冬真は自分でパンは食べられるようだったが、子供用のスプーンやフォークがあまり上手く使えないようだった。ウィンナーにフォークをなかなか刺せなくて、泣きそうな顔になっている。
「大丈夫よ。ほら、お姉ちゃんが手伝ってあげる」
 菜月が手を添えて、ウィンナーに刺してやる。
「できた! すごいね。できたね!」
 彼は神妙な顔つきでウィンナーを口に入れた。
「よく噛んでね。モグモグモグってやるんだよ。……そう。偉いね、冬真くん」
 褒めてあげると、冬真は少しだけニコッと笑った。少し打ち解けて来たのだろうか。嬉しくなって、菜月も微笑む。
「次はたまごを食べようか。スプーンですくえるかな?」
 遼司が作ったスクランブルエッグはそぼろのように細かくなっていて、フォークでは食べられそうになかった。菜月は冬真にスプーンを持たせて、手伝ってやる。なんとかすくえても、口からポロポロと零してしまった。
 すると、冬真はまた泣きそうな顔になってしまう。
 こんな小さな子が自分の失敗を気にするのはめずらしい。親がよほどしつけに厳しいのだろうか。
「いいのよ。後でキレイキレイしてあげるからね。冬真くん、おいしい?」
 彼は菜月の顔を見て、コクンと頷く。
 なんて可愛いの!
 できれば、もっと笑ってくれたらいいのに。
 ふと視線を感じて、遼司のほうを見る。すると、彼が食べる手を止めて、じっと菜月と冬真の様子を見ていた。
 菜月は頬が熱くなる。二人は別れているのだから複雑な気持ちになるものの、こんなに見られていると、まだ彼が自分に関心があるように思えてくる。
 遼司はぽつんと言った。
「小さい子の世話、上手いんだな……」
「ええ。まあ……。親戚の子の面倒をよくみていたから」
「そうか……」
 遼司が食べ始めたので、菜月も引き続き冬真の食事に付き合った。時間はかかったがすべて食べてくれて、菜月はなんとなく達成感を覚える。
「いっぱい食べたね。冬真くん、ご馳走様して」
 冬真はひどく神妙な顔で手を合わせた。
「ごちそーさま」
「はい、よくできました!」
 菜月は冬真の頭を撫でた。冬真はあまり知らない相手に頭を撫でられるのが嫌なのか、ビクッと身体を強張らせる。
「ん? どうしたの? 冬真くんはお姉ちゃん嫌い?」
 冬真は首を横に振った。
「そう。冬真くんはいい子で、可愛いね」
 菜月は冬真の手と口周りを拭いてやり、にっこり笑う。冬真は怪訝そうな顔をして菜月の顔を眺めている。やはり知らない人に対して警戒心が強いのかもしれない。きっと顔見知りの人に対してはちゃんと笑顔を見せてくれるのだろう。
 遼司はもう食べ終わっていて、菜月が冬真の世話をしている様子をじっと見ていたようだった。
「ありがとう、菜月。小さな子にはそんなふうに食べさせるものなんだって勉強になった」
 勉強のために、こちらを見ていただけだったのか。菜月は少しがっかりした。冬真が遼司とどういう関係にあるのかも判らないし、どうしてここにいるのかも判らないが、菜月は彼と元のような恋人同士に戻りたくて仕方なかった。
 彼はわたしに無関心じゃないって……そう信じていたのに。
 だから、合鍵を使ってまで勝手に部屋に入ったのだ。もしそうでなかったなら、わざわざ押しかけてきたりして恥ずかしいことになる。
「ちょっと待っていてくれ。ちゃんと話そう」
 遼司は冬真の食事用のエプロンを外し、幼児用の椅子から下ろした。そして、冬真と手を繋いで、リビングのほうに連れていき、ソファに座らせる。それからテレビをつけ、子供用のDVDを見せ始めた。
 菜月は自分が座っていた椅子を戻して、テーブルの上の食器を片付ける。キッチンには調理器具がそのまま置かれていて、乱雑な感じになっていた。以前はこんなことはなかったのだが。そもそも遼司は自炊などしていなかった。
 菜月は洗い物を始めた。
「あ、いいよ。後で僕が洗うから」
「ごめんなさい。なんか落ち着かなくて」
「……じゃあ、コーヒーを淹れるから」
 綺麗好きというわけではないが、使い終わった食器をそのままにしておくのは気持ちが悪い。幸い洗い物が多いというわけではない。片づけるのにそんなに時間はかからなかった。
 改めて、ダイニングテーブルで向かい合って座る。ここでよく嗅いだコーヒーの香りが漂い、菜月はふと懐かしくなり、切ない気持ちになった。
 そうよ。わたし、彼に別れを告げられたんだった……。
 納得できなくて、ここまで押しかけてきたけれど、やはり彼にしてみれば迷惑だったのかもしれない。
「あの……冬真くんはあなたとどういう関係なの?」
「甥だ。姉の子なんだ。今、預かっている」

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